企業には従業員の生命、身体の安全、心身の健康を確保するための「安全配慮義務」が課されています。
これは職場での労働災害を防ぐための安全衛生管理上の義務ともいえます。
企業がこの義務を怠ると、たとえ従業員に怪我などの被害がなかった場合でも、損害賠償責任(債務不履行など)を問われることがあります。
安全配慮義務違反の事例と対策
事故・災害
製麺会社で従業員が製麺機に手を巻き込まれる事故が発生。製麺機の危険性に関する十分な教育や機械にカバーを設置していなかったため、安全配慮義務違反と認められました。防止策として、機械の危険性を周知し、適切な安全対策を実施することが必要です。
過重労働
長期間にわたり月100時間を超える時間外労働をさせていた事例では、従業員の体調不良が認められなくても、安全配慮義務違反が成立しました。長時間労働が従業員の健康にリスクを及ぼすことは広く知られているため、労働時間の管理が不可欠です。
ハラスメント
ある従業員がパワーハラスメントを受け、上司がそれを認識していたにもかかわらず、企業が適切な対応をしなかったため、安全配慮義務違反とされました。従業員が安心して働ける職場環境を整備することが求められます。
在宅勤務
在宅勤務では労働時間の管理が難しく、長時間労働になりがちです。労働時間の適切な把握と、従業員の心身の状態に配慮することが重要です。
副業・兼業
従業員の副業や兼業を認める企業は、副業先での労働時間も考慮する必要があります。適切な対応を怠り、従業員の健康状態を損ねた場合、安全配慮義務違反となる可能性があります。
安全配慮義務を怠ったときの罰則
安全配慮義務違反には、民事上の責任(債務不履行、不法行為責任、使用者責任など)として損害賠償を請求される可能性があります。また、労働安全衛生法に基づく罰則も存在します。ただし、これらの罰則を免れても、企業の社会的信頼を失う恐れがあり、結果的に大きな損失を被る可能性があります。
まとめ
安全配慮義務とは、従業員の安全を予測し、事前に対策を行うことです。
取り組み方がわからない場合は、社会保険労務士や労働安全コンサルタントなどの専門家に相談することも有効です。従業員の健康と安全を守ることは、企業に課せられている義務を果たすことになると同時に、企業の信頼性と持続的な成長にも繋がります。