
無限責任社員の全員を有限責任社員にする旨の定款変更によって「合資会社」から「合同会社」へ
合資会社は、無限責任社員1名以上と有限責任社員1名以上で構成される会社です。
無限責任社員とは、もし会社が倒産した場合などに、会社が債務(借金)を返済することができなければ、無限責任社員個人の財産をもち出してでも弁済しなければならない、会社に対して「直接の責任」を負う社員のことです。
これに対して、有限責任社員とは、もし会社が倒産した場合などは、会社の債権者に対して自分が出資した額を限度として、責任を負う社員のことです。
つまり、会社が倒産したときは自分が出資したお金(10万円であれば10万円)は返ってこないけれども、その額(10万円)以上の責任は負わないということです。
以前は、合資会社か合名会社しか設立することができませんでした。
家族経営などの比較的小規模な会社を設立する場合に利用されていましたが、現在では、その責任の重さから、新たに合資会社を設立する方はほとんどいません。
これに対して、「合同会社」は平成18年に新設された「有限責任社員」1名以上で構成される会社です。
有限責任であるので、出資した額以上に責任を負うことはない事や1名で設立できることから近年増加傾向にあります。
そして、合資会社は「無限責任社員の全員を有限責任社員とする」定款変更によって、「合同会社」になることができます。
合同会社へ変更することのメリットはやはり「有限責任社員」であるということ、次に、1名から設立できること。この2つです。
合資会社は最低でも社員が2名以上必要でしたので、親族の方に名前だけの社員になってもらったりするケースも多くありましたが、合同会社では、1名で問題なく法人運営できますから、その必要もなくなりました。
合資会社の社員が死亡してしまった場合
もし親族や知り合いの方に社員になってもらっていた場合、その方が欠ける(死亡)と、手続きが非常に複雑になりますので注意が必要です。
1.有限責任社員が死亡した場合
「有限」責任社員が0人になる → 「みなし種類変更※」により「合名会社」へ種類変更することになります。
2.無限責任社員が死亡した場合
「無限」責任社員が0人になる → 「みなし種類変更※」により「合同会社」へ種類変更することになります。
※「みなし種類変更」とは、法務局に別途手続きを行わなくても自動的に種類変更が発生したとみなされることを言います。
例えば、合資会社から合同会社へ変更を考えていたのに有限責任社員が死亡してしまった場合、自動的に「合名会社」となってしまうため合同会社になるには、
- 合資会社から合名会社へ種類変更
- 合名会社から合同会社へ種類変更
という2段階の手続きを踏まなければなりません。
合資会社として存続したい場合であっても同様です。一旦、合名会社へ種類変更してから有限責任社員を加入させて、再度合資会社へ種類変更を行うことになります。
※ただし、定款に社員が死亡した場合は相続人が加入する旨の規定があれば、相続人が社員として加入することができます。
種類変更の手続きの流れ
STEP1 | 定款の変更を行い、総社員の同意を得る。 →社員の全部を有限責任社員とする定款変更を行い、総社員の同意を得ます。 |
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STEP2 | 出資を履行する。 →合資会社の社員が出資に係る払込みを行っていないときは、全額出資を完了させます。 |
STEP3 | 管轄の法務局で登記申請を行う。 →合資会社の解散の登記と合同会社の設立の登記を同時に行います。 |
合資会社から合同会社へ種類変更に必要となる書類例
- 合同会社の定款
- 総社員の同意書
- 代表社員の選定を証する書面
- 代表社員の就任承諾書
- 払込があったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 印鑑届出書
合資会社から合同会社へ種類変更に必要な登録免許税
- 合同会社の設立:30,000円
※資本金額の1,000分の1.5(3万円に満たないときは3万円)
※資本金の額が900万円を超える額については1,000分の7 - 合資会社の解散:30,000円