
職場におけるハラスメントは、従業員の能力を発揮させないばかりか、人格や尊厳を侵害し、組織秩序や業務の継続に重大な支障をもたらします。
この記事では、ハラスメントの基本と代表的な3類型(セクハラ・マタハラ・パワハラ)について、法的根拠とともに解説します。
1. ハラスメントの基本的な考え方
厚生労働省の調査(令和5年度)によれば、過去3年以内にパワハラを経験した人は19.3%、セクハラを経験した人は6.3% にのぼります。ハラスメントは人権の問題であり、企業の信頼性や人材定着にも直結する重要課題です。
2. セクシュアルハラスメント(セクハラ)
法的根拠
男女雇用機会均等法
・1999年4月~:女性対象に「雇用管理上の配慮義務」
・2007年4月~:男女対象に「防止措置の義務化」
定義
職場で行われた、労働者の意に反する「性的な言動」により、以下のいずれかが発生した場合はセクハラとなる。
- 【対価型】性的言動への対応で、労働条件について不利益を受けた
- 【環境型】性的言動により、就業環境が害された
注意点
- 男性も加害者・被害者になり得る
- 同性間でも該当する
- 性的指向・性自認に関係なく「性的な言動」であれば該当
労働者の意に反して、これらの行為が行われると、セクハラとなります。労働者の意に反するかどうかが重要なポイントです。
労働者の「意に反する」ということは換言すれば労働者の「主観」にも重きが置かれるという言い方もできるかと思います。軽率な言動は決して行ってはなりません。
3. 妊娠・出産・育児等ハラスメント(マタハラ等)
法的根拠
男女雇用機会均等法・育児介護休業法
定義
妊娠・出産・育児休業等に関する言動により、対象者の就業環境が害される行為。主に以下の2類型があります。
- 【制度等の利用への嫌がらせ型】→休業等の制度利用自体への嫌がらせ
- 【状態への嫌がらせ型】→妊娠・出産したことそのものに対する不適切言動
対象
妊娠・出産した女性労働者だけでなく、育児休業を申出・取得した男女労働者全体
補足
申出や取得を理由とする不利益取扱いは法律で明確に禁止されています。
4. パワーハラスメント(パワハラ)
法的根拠
労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)
定義
職場での地位・人間関係を背景にした優越的立場(上下関係のみならず、同僚でも該当する場合があります)にある者が、それを利用して以下の3要件を満たす行為。
- 優越的な関係を背景とする
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
- 労働者の就業環境を害している
5. 起業初期の経営者が知っておくべき実務ポイント
- ハラスメントは従業員数にかかわらず発生し得る(代表者が起こしてしまうケースも多々有り)
- 「就業規則への明記」「相談窓口の設置」等が必須対応
- 社内における定期的な教育・研修が重要
- 相談があった場合には、迅速かつ公正な対応が求められる
6. まとめ
ハラスメント対策は、単なる「従業員保護」ではなく、経営リスクの最小化であり、企業価値を守る防衛策でもあります。
起業初期の企業にとっても、ルールの整備と意識啓発は、健全な組織運営の土台となります。