当記事では、訪問介護事業所の指定を取るために必要な人員である「サービス提供責任者」について解説いたします。
訪問介護事業所における「サービス提供責任者」とは?
訪問介護事業をはじめるには、行政庁から指定を受けなければなりません。
誰でもすぐにはじめられるわけではなく、法人等を設立し、人員・設備などの要件を満たしてはじめて指定を受けることができます。
この指定の要件には様々あるのですが、人員要件のうちの一つである「サービス提供責任者」については、どのように定められているのでしょうか。
見てみましょう。
今回は厚生労働省が出している基準の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」と東京都の条例などで確認していきます。
サービス提供責任者とはどんな仕事をする人?
サービス提供責任者の仕事は、訪問介護計画の作成や、居宅介護支援事業者等との連絡調整などです。具体的に見ていきましょう。
まずは訪問介護計画の作成です。
(訪問介護計画の作成)
第24条 サービス提供責任者(第5条第2項に規定するサービス提供責任者をいう。以下この条及び第28条において同じ。)は、利用者の日常生活全般の状況及び希望を踏まえて、指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した訪問介護計画を作成しなければならない。
2 訪問介護計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画の内容に沿って作成しなければならない。
3 サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成に当たっては、その内容について利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得なければならない。
4 サービス提供責任者は、訪問介護計画を作成した際には、当該訪問介護計画を利用者に交付しなければならない。
5 サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成後、当該訪問介護計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて当該訪問介護計画の変更を行うものとする。
6 第1項から第4項までの規定は、前項に規定する訪問介護計画の変更について準用する。
訪問介護事業所の利用者さんが適切な訪問介護サービスを受けられるように、訪問介護計画を作ります。
訪問介護計画は、すでに居宅サービス計画が作成されている場合は、その内容に沿って作成する必要があります。
また、作成した計画は、利用者やその家族に対して説明をし、同意を得なければなりません。
計画を作成した後も、訪問介護サービスの実施状況などを把握し、必要に応じて、計画の変更も行います。
サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成のほか、次のような業務も行います。
(管理者及びサービス提供責任者の責務)
第28条
3 サービス提供責任者は、第24条に規定する業務のほか、次に掲げる業務を行うものとする。
一 指定訪問介護の利用の申込みに係る調整をすること。
二 利用者の状態の変化やサービスに関する意向を定期的に把握すること。
二の二 居宅介護支援事業者等に対し、指定訪問介護の提供に当たり把握した利用者の服薬状況、口腔機能その他の利用者の心身の状態及び生活の状況に係る必要な情報の提供を行うこと。
三 サービス担当者会議への出席等により、居宅介護支援事業者等と連携を図ること。
四 訪問介護員等(サービス提供責任者を除く。以下この条において同じ。)に対し、具体的な援助目標及び援助内容を指示するとともに、利用者の状況についての情報を伝達すること。
五 訪問介護員等の業務の実施状況を把握すること。
六 訪問介護員等の能力や希望を踏まえた業務管理を実施すること。
七 訪問介護員等に対する研修、技術指導等を実施すること。
八 その他サービス内容の管理について必要な業務を実施すること。
指定訪問介護の利用の申込みに係る調整、利用者の状態の変化やサービスに関する意向を定期的な把握、また、居宅介護支援事業者等に対して利用者の心身の状態や生活の状況の情報提供などを行います。
必要な人員は?
まず、サービス提供責任者は常勤の訪問介護員等の中から選ばれなければなりません。
次に、サービス提供責任者の必要人員ですが、
とされています。
よくわかりませんよね・・・。
わかりやすく説明すると、利用者の人数が
- 1~40人で1人
- 41~80人で2人
- 81~120人で3人
となります。
※一定の要件を満たせば、この40人という数字が50人でも良くなりますが、当記事では割愛いたします。
通常、新たに指定を受ける場合では利用者の人数が40人を超えることは少ないので、サービス提供責任者1人でOKという事業所さんが多いかと思います。
サービス提供責任者になるための必要な資格は?
まず、大前提として、訪問介護事業所におけるサービス提供責任者は訪問介護員でなければなりません。
そして、サービス提供責任者となるためには一定の資格等が必要になります。
とされています。
「介護福祉士その他厚生労働大臣が定める者」とは誰を言うのでしょうか。
告示を見てみましょう。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第5条第4項に規定する厚生労働大臣が定める者は次に掲げる者とする。
1 社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)第40条第2項第2号の指定を受けた学校又は養成施設において1月以上介護福祉士として必要な知識及び技能を習得した者
2 介護保険法施行規則の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第25号)による改正前の介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第22条の23第1項に規定する介護職員基礎研修課程又は一級課程を修了した者
3 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第5条第2項に規定するサービス提供責任者(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第39条の2に規定する共生型訪問介護の提供に当たる者に限る。)
この告示では次の者となっていますが、
- 介護福祉士の資格を持つもの
- 介護職員基礎研修課程又は一級課程を修了した者
- 指定障害福祉サービス事業のサービス提供責任者(共生型訪問介護の提供に当たる者に限る)
旧法による研修制度等が改廃され、研修等も新しくなっているため、現時点での制度においての訪問介護事業所のサービス提供責任者になれるものは次の研修を履修し、または資格等を持つ者になります。
- 介護福祉士
- 看護師
- 准看護師
- 保健師
- 実務者研修修了者
- 旧介護職員基礎研修課程修了者
- 旧ホームヘルパー1級課程修了者
- 共生型訪問介護のサービス提供責任者
次に、「専ら指定訪問介護に従事するもの」についてです。
専ら従事する=専従です。原則としてほかの職務に従事することはできません。
例外として、利用者に対する指定訪問介護の提供に支障がない場合には、同一敷地内にある
- 指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所
- 指定夜間対応型訪問介護事業所
に従事することは可能です。
なお、サービス提供責任者は「管理者」との兼務はOKとされています。
つまり、管理者・サービス提供責任者・訪問介護員の3役を1人の人間が行うことは可能ということになります。
ただし、この兼務の考え方については、自治体によって見解が異なることもあります。ですから、指定を受ける前に管轄の窓口で相談・確認をしておく必要があります。
以上が、訪問介護事業所の指定を取るために必要な人員である「サービス提供責任者」の概要になります。
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