事務室

訪問介護事業所の設備基準とは

訪問介護事業所をはじめるためには、行政庁の指定を受ける必要があります。

似て非なるものですが、許可と同じようなものと考えてもらって大丈夫です。

訪問介護事業所の指定の要件として、人員要件、設備要件、運営要件という3つの基準があります。

今回はそのうちの1つの設備要件について見ていきます。

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なお、厚生労働省の指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準には、次のような規定が設けられています。

(設備及び備品等)
第7条 指定訪問介護事業所には、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画を設けるほか、指定訪問介護の提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。

この基準を元に、各自治体が条例を定めています。

当記事では、東京都の条例等を参考に解説していきます。

訪問介護事業所の事務室とは?

訪問介護事業を営むためのスペース・広さですが、何平方メートル以上などといった具体的な数字までは求められていません。

東京都の条例等では、「事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の事務室を設けることが望ましい」とあります。

必要な面積ですから、常識的な範囲内の広さがあれば良いとされています。

例えば、極端な話にはなりますが、管理者、サービス提供責任者、訪問介護員など総勢5名以上いるような事業所で、事務室があまりにも狭い(10平方メートルもないような)事務室の計画では、この基準は満たさないと考えられます。

具体的な数字が規定されていませんので、確かなことは言えませんが、常識的と言える範囲内の広さで、かつ、事前に管轄窓口にて確認をしておくと確実です。

なお、東京都の介護事業者新規指定前研修資料内の「指導事項」では、訪問介護の事務室において

  • 事務を行える机を一つ以上確保すること。
  • 他事業(介護保険外事業含む)と事務室が同一の場合、当該事業専用の事務机が1以上確保されていること。
  • 個人情報を保管するための措置として、鍵のかかる書庫が配置されていること。

とされていますので、こちらも参考にされてください。

その他、例えばですが、大阪府の柏原市では、事務室については「職員、設備備品が収容できる広さを確保すること」とされています。

このように指定を行う自治体によって取り扱いが異なりますので、事前確認は必須です。

なお、専用の事務室の「専用」の意味については、訪問介護事業のみに使用する事務室である必要があるかということになりますが、これには例外があります。

同一の事業者が、その事業所内において別の事業を運営する場合であって、間仕切りをするなど当該別の事業と明確に「区分」ができる場合は、同一の事務室であっても差し支えないとされています。

また、別の事業と区分がされていなくても、訪問介護の業務に支障がないときは、訪問介護の事業を行うための「区画」が明確に特定されていれば足りるものとされています。

明確に「区分」をしていないくても、訪問介護事業を行う「区画」が明確に特定されていればそれで構いません。

ややこしいですが、区分は文字通り「分ける」必要がありますので、間仕切りやパーティションなどで区分けするのに対し、区画はそれぞれのエリアのようなイメージです。訪問介護事業とその他の事業のエリアが明確になっていればOKですということですね。

訪問介護事業所の相談室・相談スペースとは?

訪問介護事業所には、利用者のプライバシー保護に配慮した適切な設備として、利用申込の受付や相談等に対応するための「相談室」、または、パーティション等により設けた「相談スペース」を確保しなければなりません。

利用者さんやその家族が事業所に来られる際の相談室、または相談スペースを確保しておく必要があります。

事務室と相談室が別の部屋であればそれでOKですが、事務室と相談室を分けることができない場合は、パーティション等によって設けた相談スペースを設ける必要があります。

なお、東京都の介護事業者新規指定前研修資料内の「指導事項」では、訪問介護の相談室において

  • 相談等に対応するために机や椅子の配置があること。
  • プライバシー確保のため、個室又はパーテーション等で仕切られ、外部からの視線を遮断できる形状・しつらえであること。

とされていますので、こちらも参考にされてください。

その他、例えばですが、大阪府の柏原市では、相談室については「2名以上で利用可能であり、遮へい物の設置等により、相談の内容が漏えいしないよう配慮したもので、利用者申し込みの受付、相談等に対応するのに適切なスペースを確保しているものであること」とされています。

事務室と同様に、指定を行う自治体によって取り扱いは異なりますので、事前確認は必須です。

訪問介護に必要な設備及び備品等とは?

これも具体的に何が必要などと規定があるわけではありません。

ただし、東京都では、「特に、手指を洗浄するための設備等感染症予防に必要な設備を備えること」とありますので、感染症予防に必須となる手洗い施設等は必要になります。

事業所の中に手洗い施設(トイレ・洗面・キッチン等)がない場合は、別途設置する必要がありますから、事業所を賃貸しようと考えている方は注意が必要です。

例えば、まったく別の会社との共有の手洗い施設はNGです。ワンフロワーにいくつかテナントが入っていて、そのうちの1つのオフィスを借りる場合で、手洗い施設が共有の場合は、NGということですね。この場合は、ポータル型の洗面台等を設置する必要があります。

訪問介護事業の事業所を賃貸する場合は、手洗い施設の有無をあらかじめ確認されておくと良いでしょう。

その他、鍵付きの書庫なども必要としている自治体が多いです。

これも当然と言えば当然ですね。事業所には、様々な方が出入りをするわけですから。

手洗施設と鍵付き書庫以外の設備、備品としては、一般的に考えられるものとして

  • 電話
  • FAX
  • コピー機
  • パソコン
  • 事務机
  • 椅子
  • 相談室の応接机・椅子
  • 書棚

などになるかと思います。

前述のとおり、東京都では、必要な設備・備品として、手洗い施設以外には、具体的に何が必要とは規定されていません。

例えばですが、大阪府の柏原市では、訪問介護事業を実施するために必要な設備、備品として、「机、いす、パソコン、鍵付き書庫等、手指を洗浄するための設備等感染症予防に必要な設備、備品」としています。

事務室や相談室と同様に、指定を行う自治体によって取り扱いは異なりますので、事前確認は必須です。