自家用自動車に有償で旅客を乗せるには?どんな手続が必要?自家用有償旅客運送とは?行政書士がわかりやすく解説

当記事では、自家用自動車(いわゆる白ナンバー)を使用し、有償(お金をもらって)で旅客の輸送を行うための手続きについて詳細解説致します。

いわゆる「福祉(介護)タクシー」については、原則として事業用の許可が必要となります(緑ナンバーを取らなければなりません)ので、自家用自動車を利用することはできません。福祉(介護)タクシーについての詳細は次の記事を参考にしてください。

それでは、自家用自動車の有償運送について、詳しく見ていきましょう。

道路運送法にはどのように規定されているのか?

人や貨物を運送するための許可、手続きの方法などについては、道路運送法という法律に規定があります。道路運送法には、自家用自動車の有償運送に関してどのように規定されているのか条文を見てみましょう。

道路運送法第78条(有償運送)

自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
一 災害のため緊急を要するとき
二 市町村(特別区を含む。)、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。
三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。

まず赤字部分ですが、大原則として、自家用自動車で有料の運送業務を行うことは禁止されています。ただし、次に該当する場合には、自家用自動車で有料の運送業務を行うことが許されます。

  1. 災害のため緊急を要するとき
  2. 市町村(特別区を含む。)、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき
  3. 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき

一つひとつ見ていきましょう。

どのような場合に自家用自動車の有償運送が認められるのか?

①災害のため緊急を要するとき

まず、①ですが、これはシンプルですね。災害のためであり、かつ、緊急を要する場合にのみ、自家用自動車での有償運送が認められるということになります。

つまり、平時の際は絶対にNGということです。

②市町村や特定非営利活動法人(NPO法人)等が行う自家用有旅客運送を行うとき

市町村、特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送を行う場合は、自家用自動車での有償運送が認められます。

この自家用自動車を行う者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければなりません(道路運送法第98条)。

この登録を受けて行う自家用自動車での有償運送を「自家用有償旅客運送」と言いますので、ここで覚えてしまいましょう。

市町村、特定非営利活動法人(NPO法人)、その他国土交通省令で定める者とは

市町村、特定非営利活動法人(NPO法人)が国土交通大臣の登録を受けること自家用自動車で有償運送を行うことができるということは分かりました。では、その他の国土交通省令で定める者とはどのような者を言うのでしょうか。

道路運送法施行規則にその詳細が規定されています。

道路運送法施行規則第48条(法第78条第2号の者)

法第78条第2号の国土交通省令で定める者は、次のとおりとする。
一 一般社団法人又は一般財団法人
二 地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第7項に規定する認可地縁団体
三 農業協同組合
四 消費生活協同組合
五 医療法人
六 社会福祉法人
七 商工会議所
八 商工会
九 営利を目的としない法人格を有しない社団であつて、代表者の定めがあり、かつ、当該代表者が法第79条の4第1項第1号から第3号までのいずれにも該当しない者であるもの

市町村、特定非営利活動法人(NPO法人)のほか、次の者が「自家用自動車旅客運送」を行うことができるとされています。

  1. 一般社団法人又は一般財団法人
  2. 地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第7項に規定する認可地縁団体
  3. 農業協同組合
  4. 消費生活協同組合
  5. 医療法人
  6. 社会福祉法人
  7. 商工会議所
  8. 商工会
  9. 営利を目的としない法人格を有しない社団であつて、代表者の定めがあり、かつ、当該代表者が法第79条の4第1項第1号から第3号までのいずれにも該当しない者であるもの

一般社団法人や一般財団法人も「自家用自動車旅客運送」の対象とされていますね。

一般社団法人や一般財団法人は、特定非営利活動法人(NPO法人)と同じ非営利法人ですが、設立の要件が特定非営利活動法人(NPO法人)よりもかなり緩和されています。

また、設立に要する期間も短縮されています。

一般社団法人や一般財団法人に関する詳細は、弊社の下記サイトに情報を掲載しておりますので、参考にしてください。

その他、医療法人社会福祉法人も自家用自動車旅客運送の対象とされています。

地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者、その他の国土交通省令で定める旅客とは

次に「自家用自動車旅客運送」を行う者が、対象とできる「旅客の範囲」について見てみましょう。

対象とされる旅客は次のとおりです。

  1. 地域住民の運送
  2. 観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送
  3. 国土交通省令で定める旅客の運送

①の地域住民や②の観光旅客その他の当該地域に来訪する者については、そのままですね。

では、国土交通省令で定める旅客の運送とはどのような旅客を言うのでしょうか。見てみましょう。

国土交通省令で定める旅客の運送(自家用有償旅客運送)とは

自家用有償旅客運送についての詳細は、道路運送法施行規則に規定されています。

道路運送法施行規則第49条(自家用有償旅客運送)

 法第78条第2号の国土交通省令で定める旅客の運送は、市町村又は特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは前条各号に掲げる者(以下「特定非営利活動法人等」という。)が行うものであつて、次に掲げるものとする。

 一 過疎地域自立促進特別措置法第2条第1項に規定する過疎地域その他の交通が著しく不便な地域において行う、地域住民、観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送(以下「交通空白地有償運送」という。)
 二 乗車定員11人未満の自動車を使用して行う、次に掲げる者のうち他人の介助によらずに移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシー(タクシー業務適正化特別措置法(昭和45年法律第75号)第2条第1項に規定するタクシーをいう。)その他の公共交通機関を利用することが困難な者(特定非営利活動法人等が行う場合にあつては、第51条の25の名簿に記載されている者)及びその付添人の運送(以下「福祉有償運送」という。)
 イ 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第4条に規定する身体障害者
 ロ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第5条に規定する精神障害者
 ハ 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第2条第4号に規定する知的障害者
 ニ 介護保険法(平成9年法律第123号)第19条第1項に規定する要介護認定を受けている者
 ホ 介護保険法第19条第2項に規定する要支援認定を受けている者
 ヘ 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第140条の62の4第2号の厚生労働大臣が定める基準に該当する者
 ト その他肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害その他の障害を有する者

色々と書いてありますが、「自家用自動車旅客運送」は、大きく2つに分類されます。

  1. 交通空白地有償運送
  2. 福祉有償運送
①交通空白地有償運送

過疎地域自立促進特別措置法第2条第1項に規定する過疎地域その他の交通が著しく不便な地域において行う、地域住民、観光旅客その他の当該地域を来訪する者に対して行う運送を言います。

②福祉有償運送

福祉有償運送とは、次に掲げる者であって、

    1. 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第4条に規定する身体障害者
    2. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第5条に規定する精神障害者
    3. 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第2条第4号に規定する知的障害者
    4. 介護保険法(平成9年法律第123号)第19条第1項に規定する要介護認定を受けている者
    5. 介護保険法第19条第2項に規定する要支援認定を受けている者
    6. 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第140条の62の4第2号の厚生労働大臣が定める基準に該当する者
    7. その他肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害その他の障害を有する者

他人の介助が無ければ移動することが困難であり、かつ、単独でタクシーやその他の公共交通機関を利用することが困難な者とその付添人に対して行う運送を言います。

なお、福祉有償運送は乗車定員11人未満の運送が対象となっています。

11人以上を乗せるにはまた別の許可が必要になるということですね。

また、特定非営利活動法人等が福祉有償運送を行う場合にあっては、その対象が第51条の25の名簿に記載されている者である必要があります。

なお、第51条の25の名簿とは次を言います。

道路運送法施行規則第51条の25(旅客の名簿)

公共交通空白地有償運送又は福祉有償運送を行う自家用有償旅客運送者は、その運送サービスの提供を受ける旅客について、次に掲げる事項を記載した名簿を作成し、これを事務所に備えて置かなければならない。
 一 氏名
 二 住所
 三 福祉有償運送にあつては、運送を必要とする理由
 四 その他必要な事項

自家用有償旅客運送を行う自動車に関する表示しなければならない事項とは

自家用有償旅客運送者は、自家用有償旅客運送を行う場合には、その自家用有償旅客運送自動車の両側面に、次に掲げる事項を記載した標章を見やすいように表示しなければならないとされています(道路交通法施行規則第51条の23)。

  1. 名称
  2. 「有償運送車両」の文字
  3. 登録番号

なお、上記の標章への記載は、

  • 横書き
  • 各文字の大きさは同じで、縦及び横それぞれ5cm以上

であることが必要になります。

また、自家用有償旅客運送を行う者は、自家用有償旅客運送を行う場合には、「登録証の写し」を自家用有償旅客運送自動車に備えて置かなければなりません。

③公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき

最後に、道路運送法第78条第3号について見てみましょう。

道路運送法第78条第3号には、「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」と規定されていますが、これには、訪問介護事業車や居宅介護事業者の訪問介護員等が自家用自動車を用いて行う有償運送等が含まれています。

いわゆる「ぶら下がり許可」などと呼ばれているものですね。

訪問看護員等が行う「ぶら下がり許可による有償運送」の詳細については、下記ページをご覧ください。

福祉(介護)タクシーと「ぶら下がり許可」について行政書士がわかりやすく解説

まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。

自家用自動車を有償で行える場合はここまで見てきたようにかなり限定されています。

許可や登録を得ずに行う自家用自動車の有償運送を行った場合は、1年以下の懲役もしくは150万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されることとなりますので、違反しないように、くれぐれも注意してください。

福祉(介護)タクシーの運賃・料金について道路運送法にはどのように規定されているのか?行政書士がわかりやすく解説

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行政書士津田拓也プロフィール

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