車庫

当記事では、福祉(介護)タクシーの経営許可を受けるための要件のひとつである自動車の「車庫」について解説いたします。

自動車車庫とは

自動車車庫とは、その名の通り、福祉(介護)タクシー事業に使用する車両を保管するスペースを言います。

福祉(介護)タクシー事業者もタクシー事業の一種ですから、車庫は必ず確保しておかなければなりません。

我々が普段自家用車として使っている自動車の車庫とは違い、福祉(介護)タクシー事業者が確保しなければならない車庫には、多くの縛り・要件が付けられています。

自動車車庫の要件とは

自動車車庫の要件については、全国の各運輸局長が「審査基準」というものを定めており、その中で規定されています。

この審査基準は運輸局によって若干内容が異なっていますので、申請予定の管轄運輸局が定めている「審査基準」は必ず目を通すようにしてください。

なお、この記事では、近畿運輸局(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県を管轄)の審査基準を参考に解説しています。

関東運輸局(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、茨城県、栃木県、山梨県を管轄)との違いなども合わせて解説します。

  1. 原則として営業所に併設するものであること
  2. 車両と自動車車庫の境界及び車両相互間の間隔が50センチメートル以上確保され、かつ、営業所に配置する事業用自動車のすべてを収容できるものであること
  3. 他の用途に使用される部分と明確に区画されていること
  4. 申請者が、土地、建物について3年以上の使用権限を有するものであること
  5. 建築基準法に抵触しないものであること
  6. 都市計画法に抵触しないものであること
  7. 消防法に抵触しないものであること
  8. 農地法に抵触しないものであること
  9. 事業用自動車の点検、整備及び清掃のための施設が設けられていること
  10. 事業用自動車の出入りに支障がない構造であり、前面道路が車両制限令に抵触しなものであること

いかがでしょうか。

非常に多くの要件が定めれていますね。それぞれ見ていきましょう。

原則として営業所に併設するものであること

原則、車庫は営業所に併設されていなければなりません。

ただし、併設できないケースも多いと思います。

併設できない場合は即NGということではありません。

営業所から直線で2キロメートル以内に位置し、運行管理が十分に可能な車庫であればOKです。

福祉(介護)タクシー経営許可と「営業所」要件について行政書士がわかりやすく解説

車両と自動車車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保され、かつ、営業所に配置する事業用自動車のすべてを収容できるものであること

福祉(介護)タクシー事業に使用する車両と車庫の境界線との間隔が、50cm以上確保されている必要があります。

前後左右50cm以上確保されていなければならないということですから、簡単に説明すると、車両の長さ・幅よりも、それぞれ1m以上長い車庫である必要があります。

例えば、長さ410cm、幅169cmの車両で申請を行う場合、車庫については長さ510cm以上、幅269cm以上の広さである必要があります。

これは非常にハードルが高いですね。なぜこのような規制があるのでしょうか。

福祉(介護)タクシー事業者は、「旅客の輸送を行う=人の命を預かる仕事」です。

つまり、車両の整備不良などでは絶対に事故を起こしてはならないということです。

日常的に整備、点検を行うにためにも、車庫にはそのための作業スペースが必要です。

このような規制を掛けてタクシー事業者の事故を極力減らそうというのが行政の思惑です。

一般的な月極駐車場内の車庫の場合、白線で明確にラインが引かれていることが多く、これに収まらない場合は、2台分の車庫を借りなければならないケースも出てきます。

他者から車庫を借りる場合は、広さについては十分に注意しましょう。福祉(介護)タクシーで使用する車両の目処を立てた後に、車庫を探すという流れになります。

福祉(介護)タクシーに使用する自動車(福祉輸送自動車・福祉自動車)の種類について行政書士がわかりやすく解説

他の用途に使用される部分と明確に区画されていること

福祉(介護)タクシーに使用する車両専用の車庫である必要があります。併用・併設の車庫はNGです。

申請者が、土地、建物について3年以上の使用権限を有するものであること

車庫の土地・建物それぞれについて、3年以上の使用権限を有している必要があるということになりますが、自己所有の物件の場合はそこまで問題にはなりません。

車庫として申請する土地・建物を賃貸する場合には、注意が必要です。3年以上の契約は珍しいですからね。

なので、この3年という期間については、特別な規定が設けられています。

審査基準とは別で公示されている「細部取扱」にて、賃貸借契約期間が3年未満であっても契約書にいわゆる「自動更新条項」が入っていると認められる場合に限って、OKとするとされています。

つまり、1年の賃貸借契約期間でも、その契約書の条項の中に「自動更新される旨が読み取れるのであれば要件を満たしたことにしてあげる」ということになりますね。

なお、当然ですが、この賃貸借契約は「事業用」としての利用が可能である必要があります。

貸主や物件オーナーが事業用利用を認めていない物件はNGです。許可云々の問題ではなく、賃貸借契約違反となってしまいます。

建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令の規定に抵触しないこと

これらが最も重要と言っても過言ではありません。

ただし、審査基準ではこのように規定されているだけで、実際に抵触していないことの証明書などが求められているわけではありません。

手続き上は、許可申請時に宣誓書という簡単な書類の中で、関係法令に抵触していない旨を宣誓するだけでOKなのですが、もし、宣誓したにも関わらず、審査中あるいは許可後に関係法令に抵触していることが判明した場合は、許可がされず、許可がされた後も許可の取り消しになることがあります。

営業開始後に許可が取り消されるということは、営業そのものができなくなるということです。目も当てられませんね。

ですから、ここの要件はおろそかになりがちですが、絶対にクリアしておく必要があります。

我々行政書士が依頼を頂戴して申請を行う場合は、事前に現地調査、役所調査など行い要件がクリアされていることが確認できてから申請を行いますが、一般の方が申請する場合、あまり深く考えず調査も行わず、宣誓書の提出だけで済ませてしまうケースもあります。

急がば回れで、ここの調査をおろそかにせず、関係法令に抵触していなことの確認は必ず行っておかれることをお勧めします。

なお、屋根付きの車庫かそうでないかによって、調査の内容も変わってきます。

建物の外にあって、屋根が無い車庫、いわゆる青空駐車場の場合は、建築基準法などの調査が簡単に済むケースもあります。

調査の方法ですが、市区町村役場や法務局などに直接出向く、用途地域などについてはインターネットで公表されている自治体もありますので、インターネットで確認するなどの方法があります。

弊社に手続きの代行依頼をいただく場合は、弊社にて調査の代行をいたしますので、これらの手間は省いていただけます。

事業用自動車の点検、整備及び清掃のための施設が設けられていること

前述しましたが、福祉(介護)タクシーに使用する車両の点検、整備、清掃を行える施設で設けられている必要があります。

車両の点検・整備は事故防止のためです。また、お客様を乗せるタクシー業ですから清掃も適宜行う必要がありますよね。

整備

整備については、自動車点検基準(昭和26年運輸省令70号)第6条に規定されている調整を意味しています。

自動車点検基準第6条では、「自動車車庫には、次の器具、工具等を有すること」とありますので、予め準備しておきましょう。

測定用器具 物さし又は巻尺
タイヤ・ゲージ
タイヤ・デプス・ゲージ
※蓄電池の充放電の測定具
作業用器具、工具 ジャッキ又はリフト
注油器
ホイール・ナット・レンチ
輪止め
※タイヤの空気充てん具
※グリース・ガン
※点検灯
※トルク・レンチ
手工具 両口スパナ
ソケット・レンチ
プラグ・レンチ(ジーゼル自動車のみの車庫には適用しない)
モンキー・レンチ
プライヤ
ペンチ
ねじ回し
※ハンド・ハンマ
※点検用ハンマ

※印は有していることが望ましい器具・工具等とされています。

清掃施設

清掃施設については、駐車場内に清掃施設が無い場合は、最寄りのガソリンスタンドの使用承諾書等を提出することで足りる場合があります。

清掃施設が無い車庫を借りる場合は、事前に運輸局窓口でどのような書類が必要になるか確認をしておきましょう。

関東運輸局では

関東運輸局の審査基準では、「事業用自動車の点検、清掃及び調整が実施できる充分な広さを有し、必要な点検が実施できる測定用器具等が備えられているものであること」となっており、近畿運輸局の審査基準と若干異なっています。

事業用自動車の出入りに支障がない構造であり、前面道路が車両制限令に抵触しなものであること

道路

車庫の前面道路が、福祉(介護)タクシーに使用する車両の出入りに支障がない構造である必要があります。

具体的には、前面道路の「幅」が福祉(介護)タクシーに使用する車両の出入りに支障がない長さである必要があるということです。

詳細は車両制限令の第5条と第6条に定められています。

例えば、1.7mの幅の車両が通行しうる最低の車道幅員は、通常の道路であれば3.9m以上の幅が必要になります。

2.0mの幅の車両が通行しうる最低の車道幅員は、通常の道路であれば4.5m以上の幅が必要になります。

なお、ここで言う前面道路とは「公道」を言います。私道ではありませんので、注意が必要です。

私道の場合は、必要な道路の幅などの規制はかかりませんが、その私道を通行するために、私道の所有者からの「使用承諾」を得る必要があります。

また、この私道から最初に接続する前面道路(公道)の幅については、通常通り車両制限令の第5条・第6条に規定されている幅以上であることが求められます。

公道の幅の証明については、自治体等が発行している「道路幅員証明書」などを提出することで行います。

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行政書士津田拓也プロフィール

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