
労災保険とは
労働者災害補償保険、いわゆる労災保険は「労働者のため」の保険です。
労災保険は、「労働者」が業務中などに災害(事故・怪我など)に遭ってしまった場合に、療養補償や所得補償(休業補償)を行うための保険です。
基本的には労働者でなければ加入できないのですが、一定の要件を満たすことによって、事業主でも労災保険に特別加入できる制度が設けられています。
「中小事業主等の労災保険の特別加入制度」と言います。
中小事業主等の労災保険の特別加入とは
介護タクシー事業者は、事業主本人が運転者も兼ねて、現場に出ているケースが大半です。
もし、介護タクシーの事業主本人が、運転中に事故などに巻き込まれ、怪我をして一定期間働けなくなったとしても、労災保険からの所得補償(休業補償)は行われません(もちろん健康保険や国民健康保険などに加入していれば療養の支給は行われます)。
前述の通り、労働者であれば、当然に労災保険の適用を受けますので、所得補償(休業補償)が行われます。
中小企業主等の労災保険の特別加入制度は、労働者ではない事業主でも労災保険への加入を行えるようにし、労災保険上の各種補償を受けられるようにするための制度です。
福祉(介護)タクシー事業者で言えば、事業主本人が運転中に事故等を起こして怪我等をした場合でも、特別加入を行っていれば、労災保険上の療養補償や所得補償を受けられるようになります。
それでは、加入するための要件がいくつか設けられていますので、見てみましょう。
特別加入ができる中小事業主等とは?
まずは中小事業主等の事業規模要件です。
金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
---|---|
卸売業・サービス業 | 100人以下 |
その他の業種 | 300人以下 |
福祉(介護)タクシー事業は上記のうち「その他の業種」に該当しますので、大抵の福祉(介護)タクシー事業者は該当しますね。
次に、そもそも中小事業主等とは誰かという定義がありまして、定義は以下のとおりです。
① 上記の表に定める数の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者)
② 労働者以外で①の事業主の事業に従事する人(事業主の家族従事者や、中小事業主が 法人その他の団体である場合の代表者以外の役員など)
「参考:特別加入制度のしおり(中小事業主等用)厚生労働省」
なんとも分かりにくい表現ですが、、、
簡単に説明しますと、
300人以上の労働者を雇用している事業主はもはや中小事業主ではないので特別加入はできない。
ということと、
事業主本人以外にも事業主の家族専従者がいる場合や、事業主が法人の代表者で代表者以外に役員などがいる場合は、それらの者も一緒に加入する必要がある。
ということになります。
福祉(介護)タクシー事業者は、先述の通り「その他の業種」に該当しますが、福祉(介護)タクシー事業のみで300人以上雇用している事業主はおそらくいないと思いますので、ここはクリアしています。
中小事業主等の特別加入の要件とは
次に、加入要件です。
- 雇用する労働者について保険関係が成立していること
- 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
- 都道府県労働局長の承認を受けること
中小事業主等が労災保険の特別加入をするには、最低でも1人以上の労働者を雇っておく必要があります。
1人も労働者を雇っていない個人事業主や法人代表者は、中小事業主等の特別加入はできないということですね。
また、労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託しておく必要があります。
労働保険事務組合に事務の委託をして、都道府県労働局長から承認を得る必要があります。
労働保険事務組合に問い合わせをすれば、加入のために必要となる手続きなどを教えてくれますので、特別加入をお考えの方は、お近くの労働保険事務組合に一度問い合わせをしてみるとよいでしょう。
まとめ
福祉(介護)タクシー事業者に当てはめ、まとめますと、
- 福祉(介護)タクシーの事業主やその家族専従者以外で、1人でも労働者を雇っている場合には、中小事業主等に該当するので特別加入ができる
- 事業主1人のみで開業している場合は、中小事業主等には該当しないので、中小事業主等の特別加入はできない(労働者を1人も雇わない一人親方等の特別加入制度には当てはまる場合がある)
ということになります。
なお、上記の②については、1人で福祉(介護)タクシーの開業ができる「関東運輸局」管轄のケースが当てはまります。
逆に近畿運輸局管轄での福祉(介護)タクシー許可は、最低2人以上いなかれば許可は下りませんので、①に該当するケースが多くなると思います。
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