商品や製品などの在庫を多めに持っておくことには、様々なメリットがある反面、問題点もあります。
在庫の維持・管理コストの発生、商品価値の低下、キャッシュフローの減少などです。
具体的に見ていきましょう。
過剰在庫の問題点
在庫の維持・管理コストの発生
在庫の維持・管理コストには、在庫を保管するための賃貸料や光熱費、在庫の運搬費、売れ残った場合の処分費等の他、収納や棚卸しなどの作業費(人件費も)含まれます。
商品価値の低下
在庫は通常、時間が経つと価値が下がります。
- 長期間保有による商品の陳腐化
- 品質劣化に伴う商品価値の低下
によるものであったり、最悪の場合は、賞味期限切れ・品質保持期限切れによる商品の廃棄をせざるを得なくなることもあります。
在庫を維持、管理するには一般的に在庫金額の15%から25%の費用がかかっていると言われています。
在庫は会社の資産ですので、商品を仕入れた時点では利益は発生せず、販売して初めて利益(キャッシュ)が生まれます。
キャッシュフローの減少
過剰在庫に陥ると仕入れにかかった費用を支払ったまま、現金で回収するまでのサイクルが長くなり、最悪の場合は資金繰りに悪影響を及ぼし倒産します。
在庫が多ければ多いほど、キャッシュフローも悪化します。
逆に言えば、在庫が減少するとキャッシュフローは改善されるという事です。
銀行融資への影響
特にこれから銀行からの融資を考えている場合、売上に対して過剰に在庫を抱えていると、銀行の評価が下がりますので、特に注意しなければなりません。
在庫は棚卸資産になります。銀行は決算書の棚卸資産の勘定を注意して見ています。もし業界平均に比べて在庫が多いようであれば、銀行はその原因を探ります。
在庫を保有することで、急な注文にすぐ対応できたり、欠品を防ぐことで機会損失を逃さないなど様々なメリットがある一方で、それを上手く説明できずに過剰在庫と評価されてしまった場合は、その改善を求められることになるでしょう。
在庫が減ると棚卸資産が売上げになり、キャッシュを生むことになります。もちろん在庫を管理する諸費用も削減できます。
とにかく、「過剰な」在庫は会社にとって何一つ良いことはないということを、覚えておいて頂ければと思います。
実質的に資産価値の無い在庫は、顧問税理士と相談の上、速やかに処分するようにしましょう。
最後に、在庫が増えてしまう原因を列挙しますので、自社がその状況に陥っていないかチェックしてみてください。
在庫が増える原因
商品が完成するまでの時間(製造リードタイム)が長い
製造リードタイムが長いと生産日数が長くなる=納期も長くなるため、会社は一定以上の在庫を抱えようとします。
過大なロット生産を行っている
生産品の段取り替えに時間がかかる場合、一定量をまとめて生産しようとするため、在庫が増加します。
会社内での情報共有不足
営業活動において情報収集が不足していたり、営業部門から製造部門に情報が十分に伝わっていない、販売実績や在庫情報を共有できていないと社内連携が低下し、在庫が増加します。
工程管理、進捗管理ができていない
工程管理がきちんとデータ化されていなかったり、工程内の納期が明確に設定されていないと受注から出荷までの進捗状況が即座に把握できず、生産計画通り生産できないため在庫でカバーしようとします。
大量仕入れによる在庫の増加
計画に基づかない経営者の勘だけに頼る仕入れや流行商品の見込み購入、単価引き下げを狙った大量購入は、結果として不良在庫に繋がります。
大量仕入れにより売上がストップした時に、在庫は大きな重荷になります。