「給与計算ってソフトがやってくれるから簡単でしょ?」と思っていませんか?
実は、その認識はとても危険です。
給与計算ソフトは、あくまで“計算してくれるだけ”。入力項目や金額にミスがあれば、当然ながら間違った結果が出てしまいます。だからこそ、起業したての社長・経営者にこそ、最低限の仕組みを理解しておいていただきたいのです。
1. 給与計算を始める前に準備すること
給与計算を始めるには、まず次のような資料を整えておくことが必要です。
- 就業規則や賃金規程(支給・控除のルール、割増賃金の基礎など)
- 雇用契約書・労使協定(時間外労働や賃金控除など)
- タイムカード(勤怠表や出勤簿。クラウド勤怠から出力したもの等)
- 源泉徴収税額表、扶養控除申告書、住民税特別徴収通知書
- 社会保険料額表、標準報酬月額がわかる書類 etc
2. 賃金体系の確認
給与には以下のような構成があります。
- 基準内給与:基本給、役職手当、資格手当、職務手当、住宅手当など
- 基準外給与:時間外・休日・深夜手当など
支給するすべての項目について、「所得税・社会保険・雇用保険がかかるのか?」を判別する必要があります。
3. 社会保険・労働保険の基礎
- 社会保険:健康保険・厚生年金保険・介護保険(40歳以上)
- 労働保険:雇用保険(従業員負担あり)と労災保険(事業主負担)
月給や賞与からは、法律に基づいた保険料を控除する必要があります。
4. 税金の基礎知識(所得税・住民税)
所得税は、扶養控除の有無や社会保険料、通勤手当などを控除して「課税所得」を算出し、源泉徴収税額表により決定します。
住民税は前年の所得に基づき、6月から翌年5月までの給与から控除します。
5. 給与計算の流れ
実際の給与計算は以下のステップで行います。
- 支給額(基本給、手当、残業代など)を集計
- 社会保険料を計算
- 課税所得を算出し、所得税・住民税を計算
- 控除額を差し引き、差引支給額を決定
6. 割増賃金のルール
- 法定時間外労働:25%以上
- 法定休日労働:35%以上
- 法定深夜労働(22時~5時):25%以上
- 法定時間外労働+深夜労働:50%以上
- 法定休日労働+深夜労働:60%以上
月60時間超の法定時間外労働には、50%以上の割増が必要です。
7. 年末調整とは
1年の仮計算の税額と、実際の控除額を比較して「過不足」を精算するのが年末調整です。生命保険控除・住宅ローン控除などもここで反映されます。
まとめ:給与計算のミスは「ソフトのせい」ではない
給与計算は「制度理解」が命です。就業規則・賃金規程の整備と、実務上の基礎知識を押さえておくことで、間違いを防ぎ、従業員との信頼関係を築くことができます。






