合同会社の業務執行社員に課せられる義務とは?

合同会社と業務執行社員の関係は、株式会社と取締役の関係と同じく委任関係です。

したがって、民法の委任の規定が準用されている他、合同会社における業務執行社員には、株式会社における取締役に課せられる義務と類似の義務が会社法上課せられています。

合同会社の業務執行社員に就任すると、種々の義務を負うことになり、また、その義務違反に関しては損害賠償責任を負う場合があります。

ですから、合同会社に出資をしても重い責任や義務を負いたくない場合には、業務執行社員にはならず、単なる社員のままでいるという選択肢も検討するべきでしょう。

善管注意義務・忠実義務

業務執行社員は、株式会社の取締役と同様に、善良な管理者の注意をもってその職務を行わなければなりません(善管注意義務)。

また、法令および定款を順守し、合同会社のために忠実にその職務を行わなければなりません(忠実義務)。

善管注意義務・忠実義務に関しては、定款で別段の定めができる旨の規定が会社法に置かれていないため、善管注意義務・忠実義務を定款で排除することはできません。

報告義務

業務執行社員は、合同会社または合同会社の社員からの請求があるときは、いつでもその職務の状況を報告し、その職務が終了した後は遅滞なくその経過および結果を報告しなければなりません。

この報告義務が民法645条の受任者の報告義務と異なる点は、委任者である合同会社のみならず、社員も報告を求めることができる点にあります。

なお、この報告義務に関しては定款で別段の定めをすることができます。

競業避止義務

業務執行社員は、会社の業務を遂行する強大な権限が与えられており、また業務上の機密にも通じているため、その地位を利用して会社の取引先を奪うなど、会社の利益を犠牲にして自己や第三者の利益を図る危険性があります。

そこで、会社の利益を守るために、業務執行社員が下記1、2の行為(競業行為)を行う場合には、定款に別段の定めがない限り、当該業務執行社員以外の他の社員全員の承認を受けることを必要とし、承認を得ずに下記1、2の競業行為をした場合、合同会社に対して損害賠償責任を負うことになります。

競業行為

  1. 自己または第三者のために合同会社の事業の部類に属する取引をすること。
  2. 合同会社の事業と同種の事業を目的とする会社の取締役、執行役、業務を執行する社員になること

なお、合同会社の業務執行社員が、他の社員全員の同意得ないで1または2の行為をしたときは、1または2の行為によってその業務執行社員または第三者が得た利益の額は、合同会社に生じた損害の額として推定されます。

利益相反取引の制限

業務執行社員がみずから当事者として、または他人の代理人として合同会社と取引する場合には、業務執行社員が合同会社から不当に安い価格で商品を仕入れる等、合同会社の利益を害する危険性があります。

そこで、会社の利益を守るために、業務執行社員が下記1、2の行為(利益相反取引)を行う場合には、定款に別段の定めがない限り、当該業務執行社員以外の社員の過半数の承認を受けることを必要とし、承認が得ずに下記1、2の利益相反取引をした場合、合同会社に対して損害賠償責任を負うことになります。

利益相反取引

  1. 業務執行社員が、自己または第三者のために合同会社と取引しようとするとき(直接取引)。
    • 例:業務執行社員が合同会社と売買契約を締結しようとするとき。
      →社員の過半数の承認が必要
    • 例:業務執行社員が第三者の代理人として合同会社と売買契約を締結しようとするとき。
      →社員の過半数の承認が必要
  2. 合同会社が業務執行社員の債務を保証することや、その他社員でない者との間において合同会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき(間接取引)。
    • 例:合同会社が、業務執行社員の個人的な債務に関して、業務執行社員の債権者と保証契約を締結しようとしたり、債務引受しようとするとき。
      →社員の過半数の承認が必要

もっとも、この利益相反取引の制限も競業避止義務と同様に会社利益を保護するための規制ですので、あらかじめ定款で別段の定めをすることも可能です。

ですから、利益相反取引を一切禁止することもできますし、逆に、社員の承諾を一切不要とすることや、承諾の要件を緩和することもできます。

なお、利益相反取引について当該業務執行社員以外の社員の過半数の承認を得た場合には、民法108条の規定は適用されませんので、当該業務執行社員が同時に合同会社を代表することも認められます。

競業避止義務・利益相反取引の制限のまとめ

原則 例外
競業行為 禁止 当該業務執行社員以外の社員全員の承認があれば可能
利益相反取引 当該業務執行社員以外の社員の過半数の承認があれば可能

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