行政書士法人・社労士事務所モヨリック

近年、副業・兼業が一般化する中で、複数の事業所において社会保険の加入条件を満たす「二以上勤務者」が増えています。この記事では、二以上勤務者の定義、手続き、保険料の取り扱い、実務上の留意点について解説します。

二以上勤務者とは

「二以上勤務者」とは、複数の事業所で健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を有する人を指します。主に以下のようなケースが該当します。

  • 複数の法人でそれぞれ代表や常勤役員となっている場合
  • 一方の会社で代表や常勤役員、他方の会社で従業員として被保険者要件を満たして雇用されている場合
  • 複数の事業所で雇用され、いずれでも被保険者要件を満たす場合

資格取得・喪失の手続き

二以上勤務者となった場合、すべての該当事業所で資格取得届を提出し、同時に「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届(通称:二以上勤務届)」を提出します。

  • 主たる事業所は本人が選択(原則は本人が申請をする。ただ、実務上は企業側が手続きをすることが多いです。)
  • 健康保険組合に加入する場合は、厚生年金資格取得後に届出

社会保険料の計算と案分方法

社会保険料は標準報酬月額または標準賞与額を合算し、それぞれの事業所の報酬に応じて案分して計算されます。

賞与支給時の注意点

同月に複数事業所から賞与を受けた場合、その合計額をもとに標準賞与額を決定し、それぞれの事業所に案分します。賞与の支給月が重ならない場合は対象外です。

随時改定の注意点

随時改定(いわゆる月額変更)の対象になるかどうかは、単一の事業所の報酬増減のみで判断され、複数事業所の報酬は合算しません。

実務上の留意点

  • 手続き漏れがあると、他の事業所にも影響が及ぶ
  • 賞与・随時改定・定時決定などのイベントごとに再確認
  • 健康保険組合の場合は、健康保険組合ごとに必要書類や手続き方法が異なるため事前確認が必須

まとめ

二以上勤務者に関する社会保険の取り扱いは、手続きや保険料の案分方法が複雑であり、実務担当者は制度の基本をしっかり理解しておく必要があります。特に副業を認める企業においては、今後ますます重要性が増す分野です。必要に応じて、専門家と連携して手続きミスを防ぎましょう。