障害者総合支援法とは
障害者総合支援法は、正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」とし、障害者の日常生活を総合的に支援するために制定された法律です。
障害者総合支援法を体系的に理解するには、まずは法の「目的」と「基本理念」の確認が欠かせません。
障害者総合支援法制定の目的は下記のとおりです。
この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
次に、法の基本理念についても見てみましょう。
障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。
これらを要約しますと、障害者総合支援法は、
- 障害福祉サービスに係る給付
- 地域生活支援事業
- その他の支援
を行うことによって、
- 障害者及び障害児の福祉の増進を図る
- 障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与する
ことを目的としています。
そして、次が基本理念部分。
- 全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられること
- 社会参加の機会が確保されること
- どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
- 障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資すること
これらを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。
とされています。
障害者総合支援法がどのような目的で作られ、どのような基本理念をもとに実行されているのかを押さえておくことで、制度の細かな部分の理解もしやすくなります。
それでは次に、障害者総合支援法には実際にどのようなサービスが定められているのかを見ていきましょう。
障害者総合支援法に規定されている障害者へのサービスには、大別すると「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つがあります。
自立支援給付とは
自立支援給付は下記の通りです。
- 介護給付費
- 訓練等給付費
- 特定障害者特別給付費
- 計画相談支援給付費
- 補装具費
- 高額障害福祉サービス等給付費
- 地域相談支援給付費
- 療養介護医療費
- 自立支援医療費
なお、自立支援給付において中心的な役割を担っているのが上記のうち、
- 介護給付費
- 訓練等給付費
になります。
介護給付費、訓練等給付費についてはそれぞれ下記のサービスが含まれています。
介護給付費に含まれるサービス
- 居宅介護
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 重度障害者等包括支援
- 短期入所(ショートステイ)
- 療養介護
- 生活介護
- 施設入所支援
介護給付は、日常生活に必要な「介護」の支援を提供するサービスです。
なお、更にここから支援・サービスの形態別に分類することができます。
訪問系
- 居宅介護
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 重度障害者等包括支援
日中活動系
- 短期入所(ショートステイ)
- 療養介護
- 生活介護
施設系
- 施設入所支援
訓練等給付費に含まれるサービス
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型・B型
- 就労定着支援
- 自立生活援助
- 共同生活援助(グループホーム)
訓練等給付は、その名の通り、日常生活や社会生活を営むために必要な「訓練等」の支援を提供するサービスです。
なお、更にここから支援・サービスの形態別に分類することができます。
居住支援系
- 自立生活援助
- 共同生活援助(グループホーム)
訓練・就労系
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型・B型
- 就労定着支援
地域生活支援事業とは
次に、地域生活支援事業について見てみましょう。
厚生労働省HPでは地域生活支援事業の目的として、次のよう記載されています。
- 障害者及び障害児が、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、地域の特性や利用者の状況に応じ、柔軟な形態により事業を効果的・効率的に実施。
- もって、 障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無に関わらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与する。
引用元: 厚生労働省HP
地域生活支援事業とは、地域の特性やその地域に住んでいる障害者の人数、障害の程度などに応じて、必要な支援を柔軟に行っていくための事業です。
障害者のニーズに応じて、前述の自立支援給付と組み合わせて利用することも想定されています。
自立支援給付は個別給付とも呼ばれ、障害者個人に対する福祉サービスがメインとなります。
対して、地域生活支援事業では、地域の実情を考慮した上で、当該地域に居住する多くの障害者に対して、柔軟かつ、効果的・効率的に福祉サービスを行います。
例えば、
- 突発的なニーズに臨機応変に対応する
- 個別給付では対応できない複数の利用者への対応する
ことが地域生活支援事業では可能となります。
地域生活支援事業の実施主体
地域生活支援事業は、市町村、都道府県が実施します。
市町村地域生活支援事業(法第77条)
- 市町村(指定都市、中核市、特別区を含む。都道府県が市町村必須事業を代行可)
- 事業の全部又は一部を団体等に委託又は補助が可能
都道府県地域生活支援事業(法第78条)
- 都道府県(指定都市、中核市に委託可能)
- 事業の全部又は一部を団体等に委託又は補助が可能
市町村が行う地域生活支援事業
市町村が行う地域生活支援事業には、必ず行わなければならない10の事業と、任意で行うことができる事業その他の事務に分けられています。
必須事業
- 理解促進研修・啓発事業(障害者等の自立した日常生活及び社会生活に関する理解を深めるための研修及び啓発を行う事業)
- 自発的活動支援事業(障害者等、障害者等の家族、地域住民等により自発的に行われる障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むことができるようにするための活動に対する支援を行う事業)
- 相談支援事業(障害者等が障害福祉サービスその他のサービスを利用しつつ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、地域の障害者等の福祉に関する各般の問題につき、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の厚生労働省令で定める便宜を供与するとともに、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整その他の障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行う事業。※④を除く)
- 成年後見制度利用支援事業(障害福祉サービスの利用の観点から成年後見制度を利用することが有用であると認められる障害者で成年後見制度の利用に要する費用について補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難であると認められるものにつき、当該費用のうち厚生労働省令で定める費用を支給する事業)
- 成年後見制度法人後見支援事業(障害者に係る民法に規定する後見、保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るための研修を行う事業)
- 意思疎通支援事業
- 日常生活用具給付等事業
- 手話奉仕員養成研修事業
- 移動支援事業
- 地域活動支援センター機能強化事業(障害者等につき、地域活動支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業)
任意事業
市町村は、上記の必須事業のほか、現に住居を求めている障害者につき低額な料金で福祉ホームその他の施設において当該施設の居室その他の設備を利用させ、日常生活に必要な便宜を供与する事業その他の障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な事業を行うことができます。
具体的には次の事業になります。
- 日常生活支援
- 社会参加支援
- 権利擁護支援
- 就業・就労支援
その他、障害支援区分認定等事務も行います。
都道府県が行う地域生活支援事業
都道府県が行う地域支援事業には、必ず行わなければならない5つの事業とその他任意に行える事業とがあります。
必須事業
- 専門性の高い相談支援事業
- 専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業
- 専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業
- 意思疎通支援を行う者の派遣に係る市町村相互間の連絡調整事業
- 広域的な支援事業
都道府県は、より専門性が高い相談支援や市町村を跨いだ広域的な支援等を行います。
任意事業
都道府県は、上記の必須事業のほか、障害福祉サービス又は相談支援の質の向上のために障害福祉サービス若しくは相談支援を提供する者又はこれらの者に対し必要な指導を行う者を育成する事業その他障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な事業を行うことができます。
具体的には次の事業になります。
- 日常生活支援
- 社会参加支援
- 権利擁護支援
- 就業・就労支援
- 重度障害者に係る市町村特別支援
都道府県は、その他、障害福祉サービスに従事する者に向けた研修事業等も行っています。
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