
従業員の「職務専念義務」とは?
会社で働く従業員には、就業時間中に与えられた職務に専念することが求められます。
これを「職務専念義務」といいます。
特に起業して間もない企業では、社員との関係がフラットになりやすく、業務外行為に対して曖昧な対応になりがちです。
しかし、就業規則等によって、職務専念義務を明確に定めておくことは、業務効率と組織秩序を守るうえで非常に重要です。
職務専念義務とは何か?
職務専念義務とは、従業員が就業時間中は会社から命じられた業務に専念しなければならない義務を指します。
これは労働契約に基づく「誠実労働義務」の一部と解釈することができます。
この「職務専念義務」は、法令で直接明記はされていませんが、判例等によって認められています。
なぜ起業初期でも必要なのか?
ベンチャーやスタートアップでは「自由な働き方」を重視する傾向がありますが、自由と放任は別物です。就業時間中に以下のような行為が常態化すると、職務専念義務違反となる可能性があります。
- 私用スマートフォンでの通話やSNSの常習的使用
- 副業活動や自営業の準備
- 就業時間中のゲーム、動画視聴
- 無断の外出や中抜け
就業規則で明文化するメリット
就業規則に職務専念義務を明記しておくことで、次のようなトラブルを防ぐことができます。
- 私的行為に対する注意・指導に「根拠」が生まれる
- 指導しても改善されない場合に、懲戒処分の裏付けとなる
- 他の従業員からの不満や不公平感を回避できる
就業規則の記載例
従業員は、就業時間中は会社の業務に専念し、正当な理由なく職務を離脱してはならない。
また、会社の許可なく、私用目的でインターネットの使用、携帯電話の操作、外出その他業務外の行為を行ってはならない。
例外・柔軟な取り扱いも可能
例えば、次のようなケースでは、職務専念義務の例外を認めることも実務的には可能です:
- 緊急時に家族からの連絡を受ける
- 事前に申請して認められた中抜け(銀行・通院など)
ただし、あくまでも「例外」として運用し、日常的な職務外行為が野放しにならないよう、管理のルールを整備しておくことが大切です。
まとめ
「うちの会社はまだ小さいから、細かいルールはいらない」という考え方は危険です。
職務専念義務は、会社の指揮命令権と、労働契約の基本に関わる事項であり、明文化することでトラブルを未然に防ぎ、会社の成長を支える基盤になります。