賞与と賞与支払届

賞与(ボーナス)は、毎月の給与とは別に支給される特別な賃金であり、支給した場合には社会保険の手続きが必須です。

この記事では、賞与の法的な扱いから、賞与支払届・保険料の計算方法まで、実務で知っておくべき基本事項を解説します。

1. 賞与とは?

賞与とは、労働の成果や勤務実績などに応じて会社が任意に支給する報酬です。

法律上の支給義務はありませんが、就業規則や雇用契約で支給が定められている場合は、義務として取り扱われます

2. 賞与支給時の手続き – 賞与支払届とは

社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入している従業員や役員に賞与を支給した場合、5日以内に「賞与支払届」を年金事務所等に提出する必要があります。

届出の概要

  • 対象者:社会保険加入者(役員含む)
    ※産前産後・育児休業中の者は社会保険料免除制度あり。退職者も退職時期によっては社会保険料がかからない場合あり。
  • 届出期限:賞与を支払った日から5日以内
  • 提出先:年金事務所または事務センター(郵送・電子申請可)

届出が不要なケース

  • 賞与の支給回数が年4回以上 → 月給扱いとなり、賞与支払届不要
  • 慶弔見舞金(結婚祝い、出産祝いなど)は賞与に該当せず届出不要

3. 賞与支払届を出さないとどうなる?

賞与支払届を提出しないと、社会保険料が正しく計算されず、従業員の将来の年金額にも影響します。また、届出を怠ると罰則等の対象となる可能性もあるため注意が必要です。

4. 社会保険料の計算方法(賞与支給時)

賞与支給時の社会保険料は、給与とは別に計算されます。

健康保険・介護保険

  • 標準賞与額:総支給額から1,000円未満を切り捨てた額
  • 保険料率:加入する健康保険組合・協会けんぽ(都道府県支部)によって異なる
  • 40歳~64歳:介護保険料も併せて徴収
  • 上限:健康保険の標準賞与額には年間573万円の上限があります。これを超える場合は、標準賞与額累計申出書を提出しなければなりません。
計算式:健康保険料・介護保険料=標準賞与額×(健康保険料率+介護保険料率)÷2

厚生年金保険

  • 標準賞与額:総支給額から1,000円未満を切り捨てた額
  • 保険料率:18.3%
  • 上限:1回の支給で150万円まで(同じ月に2回以上支給されたときは合算で150万円まで)
計算式:厚生年金保険=標準賞与額×(厚生年金保険率÷2)

雇用保険料

給与と同様に支給額に雇用保険料率を掛けて算出

年齢・制度に応じた注意点

  • 70歳以上の従業員 → 厚生年金保険料不要
  • 産休・育休中 → 社会保険料免除(ただし届出は必要)
  • 退職日が月の途中 → 社会保険料徴収不要

5. 賞与を支払わない場合も届出が必要

賞与を支給しない月でも、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。これにより、年金機構側が賞与支払状況を把握でき、未提出扱いによる不利益を避けることができます。

6. 実務ポイントとまとめ

起業間もない会社でも、以下の点に注意して賞与支給を行いましょう。

  • 賞与を支給したら5日以内に賞与支払届を提出
  • 社会保険料の計算は給与と別ルール
  • 制度や従業員の状況(年齢・育休・退職予定)によって取扱いが異なる

ポイントは「事前準備」と「届出漏れの防止」

特に6~8月の賞与支給時期は、定時決定や年度更新など他の労務手続きとも重なる繁忙期です。

支給予定日を決めたら、必要書類の準備と提出先の確認を早めに行い、ミスや遅延のないよう対策しましょう。