特別休暇

特別休暇制度とは?慶弔休暇など、就業規則に盛り込むことができる任意の休暇

特別休暇とは、労働基準法などに定めのない、会社独自に設ける任意の休暇のことを指します。慶弔休暇(結婚や葬儀など)はその代表例です。制度として義務ではありませんが、多くの企業で導入されており、従業員の満足度や定着率を高める福利厚生の一環としても注目されています。

特別休暇制度を就業規則に盛り込むべき理由

起業したばかりの段階では、社内の柔軟な雰囲気を重視し、管理職の裁量で休暇対応を行っているケースもあるでしょう。しかし、従業員が増えると「誰は何日取得できて、なぜ自分は少なかったのか」といった不公平感や不透明さが問題になります。
就業規則に明確なルールを定めることで、次のような効果があります:

  • 管理職の判断基準が統一され、トラブルを未然に防げる
  • 従業員が納得感を持って制度を利用できる
  • 経営者としての「労務リスク」が減少する

特別休暇と「休日」との違い

特別休暇は「休暇」の一種であり、「休日」とは法律的に意味が異なります。

  • 休日:会社が労働義務そのものを課していない日(例:土日・祝日など)。賃金の支払い義務は原則なし。
  • 休暇:本来働く日(所定労働日)に、個別の理由で労働義務を免除する日。原則として有給・無給の区別が必要。

つまり、特別休暇は「働くべき日を、一定の私的理由で休める制度」です。
就業規則に特別休暇を定めることで、「この日は出勤義務があるのか」「休んでも給料が出るのか」といった判断が明確になります。

制度設計に必要な5つの検討ポイント

実際に就業規則に特別休暇を盛り込む際には、以下の項目について明文化する必要があります。

① 付与事由と日数

特別休暇の対象となる出来事(結婚・配偶者の出産・近親者の死亡など)ごとに、対象となる親族の範囲と付与日数を定めます。

特別休暇(慶弔休暇)の例

  • 本人の結婚:連続5日以内
  • 配偶者の出産:2日
  • 父母・配偶者・子の死亡:連続5日以内
  • 本人の祖父母・兄弟姉妹の死亡:連続3日以内
  • 配偶者の祖父母・兄弟姉妹の死亡:連続2日以内

② 分割取得の可否

事由に応じて、連続取得のみ認めるか、分割してもよいかを定めておきます。

  • 結婚・弔事:基本的に連続取得とし、取得日数の上限を設ける
  • 配偶者の出産:14日以内での分割取得を認めるなど、柔軟性を確保

③ 取得期限の設定

特別休暇はライフイベントに対応したものであるため、無期限に取得権を認めると管理が煩雑になります。

  • 結婚休暇:婚姻届提出日から6か月以内
  • 忌引休暇:死亡日から10日以内

④ 給与支給の有無

特別休暇が有給か無給かは会社で自由に定められます。ただし、実務的には次のような判断が有効です。

  • 勤続6か月以上の社員:有給とし通常の賃金を支払う
  • 勤続6か月未満の社員:無給休暇として付与し、欠勤扱いにはしない
  • 弔事・出産などは勤続年数にかかわらず有給とする

⑤ 取得手続き

  • 結婚休暇:少なくとも1か月前までに所定の申請書を提出
  • 忌引休暇等:原則として事前に届け出(やむを得ない場合は事後)

導入後の効果

このように制度を文書化しておくことで、管理職が判断に迷うことがなくなり、従業員にも公平感のある運用が実現できます。特にベンチャー企業のように人数が急増する場合は、早期にルール整備することが重要です。

まとめ:特別休暇は福利厚生の基本

特別休暇は法定義務ではありませんが、従業員のライフイベントに寄り添う制度として、経営者として整備しておきたいポイントの一つです。

とくに起業して間もない企業では、制度設計における「不公平感」が将来のトラブルにつながりやすく、明文化された就業規則が経営の安定につながりします。