
当記事では、道路運送法に規定されている特定旅客自動車運送事業について詳細解説いたします。
特定旅客自動車運送事業とは
特定旅客自動車運送事業について、道路運送法にはどのような規定があるのでしょうか。
見てみましょう。
緑色の文字をご覧ください。こちらが道路運送法で定義されている「特定旅客自動車運送事業」となります。
旅客自動車運送事業の種類は、次に掲げるものとする。
一 一般旅客自動車運送事業(特定旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業)
イ 一般乗合旅客自動車運送事業(乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
ロ 一般貸切旅客自動車運送事業(一個の契約により国土交通省令で定める乗車定員以上の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
ハ 一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約によりロの国土交通省令で定める乗車定員未満の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
二 特定旅客自動車運送事業(特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する旅客自動車運送事業)
特定旅客自動車運送事業とは、特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する旅客自動車運送事業を言います。
あくまでも「特定の者」「一定の範囲」に限って、旅客の運送が可能ということになりますね。
予め、旅客を特定し、その範囲も決めておかなければならないというこです。
特定旅客自動車運送事業の許可手続きについて
次に、特定旅客自動車運送事業を行う場合に必要となる許可手続きについて見てみましょう。
道路運送法の第43条にその規定があります。第43条に規定があることから、特定旅客自動車運送事業許可のことを「43条許可」などと呼ぶこともあります。
特定旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません(道路運送法第43条)。
許可を得ていない者は、特定旅客自動車運送事業を行うことができません。
許可申請手続きについては、道路運送法第43条第2項に規定があります。
特定旅客自動車運送事業の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 路線又は営業区域、営業所の名称及び位置、営業所ごとに配置する事業用自動車の数その他国土交通省令で定める事項に関する事業計画
三 運送の需要者の氏名又は名称及び住所並びに運送しようとする旅客の範囲
許可申請書には、代表者等の氏名のほか、
- 路線・営業区域
- 営業所の名称
- 営業所の位置
- 営業所ごとに配置する事業用自動車の数
- その他国土交通省令で定める事項
上記の関する事業計画を記載する必要があります。
さらに、
- 運送の需要者の氏名や住所
- 運送しようとする旅客の範囲
も記載しなければなりません。
特定旅客自動車運送事業という名の通り、運送の対象となる旅客の氏名や住所、運送しようとする旅客の範囲まで具体的に定めた上で、申請を行わなければならないということになりますね。
※その他国土交通省令で定める事項とは
その他、国土交通省令で定める事項については、道路運送法施行規則第27条第1項に規定あります。次の通りです。
- 主たる事務所の名称
- 主たる事務所位置
- 自動車車庫の位置
- 自動車車庫の収容能力
なお、これらの申請書には、事業用自動車の運行管理の体制その他の国土交通省令で定める事項を記載した書類も添付しなければならず、国土交通大臣は、当該申請者の登記事項証明書その他必要な書類の提出も求めることができるとされています(道路運送法第43条第4項)。
許可に係る審査基準
その他、許可に係る審査について、注意点があります。
道路運送法第43条第3項には次のような規定があります。
国土交通大臣は、特定旅客自動車運送事業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 当該事業の経営により、当該路線又は営業区域に関連する他の旅客自動車運送事業者(旅客自動車運送事業を経営する者をいう。以下同じ。)による一般旅客自動車運送事業の経営及び事業計画の維持が困難となるため、公衆の利便が著しく阻害されることとなるおそれがないこと。
二 当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること。
上の事業計画で定めた路線・営業区域に関連する他の旅客自動車運送事業者の経営や事業計画の維持が困難となり、結果、公衆の利便が阻害される恐れがあるものは、許可がおりません。
また、輸送の安全確保が適切でないと判断された場合にも、許可は行われませんので、事業計画を作成する場合は、これらの点に注意しましょう。
なお、国土交通大臣は、特定旅客自動車運送事業の経営を行うことによって、当該路線又は営業区域に関連する一般旅客自動車運送事業の経営、事業計画・運行計画の維持が困難となあり、公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあるときは、その特定旅客自動車運送事業者に対し、相当の期限を定めて、公衆の利便を確保するためやむを得ない限度において、当該事業の実施方法の変更を命ずることができるとされています(道路運送法第43条第7項)。
特定旅客自動車運送事業になれない者とは
欠格事由については、一般旅客自動車運送事業と同様となっていますので、下記ページを参考にしてください。
特定旅客自動車運送事業者の運賃及び料金
特定旅客自動車運送事業者は、旅客の運賃及び料金を定めなければなりません。運賃及び料金は、あらかじめ、国土交通大臣に届け出なければならず、変更するときも同様です(道路運送法第43条第6項)。
一般乗用旅客運送事業者などは、運賃及び料金の認可を受けなければなりませんが、特定旅客自動車運送事業者は単なる届出となっていますので、手続きが簡素化されています。
なお、特定旅客自動車運送事業の運賃及び料金の設定又は変更の届出は、次の事項を記載した運賃及び料金設定(変更)届出書を提出することによって、行います(道路運送法施行規則第32条)。
- 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名
- 設定又は変更しようとする運賃及び料金を適用する路線・営業区域
- 設定又は変更しようとする運賃及び料金の種類、額とその適用方法
特定旅客自動車運送事業と介護事業・障害福祉事業
特定旅客自動車運送事業の具体例
介護保険法の指定を受けた介護事業所や障害者総合支援法の指定を受けた障害福祉サービス事業所が、自社の利用者(会員)に限定して行う運送サービスが挙げられます。
ここまで見てきた通り、特定旅客自動車運送事業は特定の旅客のみを輸送することが許可の条件となっていますので、自社の利用者以外を運送することは許されていません。
しかしながら、訪問介護や居宅介護サービスの一環として、特定旅客自動車運送事業の許可を得ることで、利用者(会員)の送迎や運送を行うことができれば、利用者の満足度は上がります。
また、介護事業所等の売上げアップにも繋がります。
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