有限会社から株式会社への組織変更手続きについてわかりやすく解説。7つのポイントを押さえてスムーズな手続きを

有限会社から株式会社への変更手続きの概要

平成18年5月から有限会社の制度が廃止されたため、現在は有限会社を設立することができなくなっています。

それ以前から存在する有限会社は『特例有限会社』として存続していますが、法律上は、株式会社と同様のものとして扱われています。

現在『特例』として、制限期間がなく存続することが認められていますが、『株式会社』へ商号を変更することで、株式会社に移行することができます。

特例有限会社から株式会社への移行は、商号中に株式会社という文字を用いる定款の変更に係わる株主総会の特別決議を行った後、本店の所在地において移行の登記をすることにより効力を生じます。

株主総会の決議をした後、本店の所在地において2週間以内に、支店の所在地において3週間以内に、特例有限会社の解散登記を行い、商号変更後の株式会社についての設立の登記を同時に行わなければなりません。

また、これに併せて、商号以外の定款の内容についても変更することができます。

この場合、株式会社の設立登記申請書に、変更後の登記事項を直接記載し、当該変更に係る書面をすべて添付することになります。

同時に変更できる事項

  • 商号の変更(「有限会社」以外の部分の商号)
  • 役員の変更
  • 役員の任期の設定
  • 事業目的の変更
  • 機関設計(取締役会、監査役の設置など)など

※本店移転(管轄外)及び支店設置、移転、廃止の登記は同時にすることはできません。

また、株式会社へ商号変更を行った場合、有限会社の法人実印(代表社印)を「株式会社」の商号が入った新しい印鑑に作り変え、法務局に届け出る必要があります。

改印の手続きは、株式会社への組織変更の手続きと同時に行うことができます。

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役員の任期について

有限会社は、役員の任期についての規定はありませんでしたが、株式会社には任期があります。

株式会社へ移行する際、新たに役員の任期を定める必要がありますが、その任期の起算点は『有限会社の役員に就任したとき*』からとなるため、株式会社へ移行と同時に役員の任期が満了する場合があります。

※有限会社設立当初から取締役である場合、就任年月日は登記されていません。この場合『会社成立の年月日』が起算点とされ、商号変更後も通算されることになります。

株式会社の役員の任期は、原則、取締役は2年、監査役は4年となります。

株式の譲渡について制限を設ける会社(非公開会社)においては、定款で定めることにより、それぞれ最長10年まで任期を延ばすことができます。

例えば、任期を最長の10年とした場合であっても、その会社が15年前に設立されており設立時点で取締役に就任していたとすると、移行と同時に任期満了により退任することになります。

この場合、移行を決議する株主総会において、移行後の役員を選任する必要があります。

移行による株式会社設立の登記においては、登記官による職権で、取締役及び監査役の就任年月日が記録されます。

取締役又は監査役が商号変更の時に退任しない(変更前後で変わりがない)場合は、その就任年月日として、特例有限会社の登記における就任年月日が移記され、商号変更の時に就任した場合には、商号変更の登記年月日が記録されます。

株主総会議事録記載例

第○号議案 取締役2名選任の件

議長は、前号議案で承認を得た定款変更が、「会社法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」第46条の登記をすることによって効力が生じるときに、定款の規定により、取締役の全員が任期満了となるので、新たに取締役を選任したい旨を述べその選任方法について議場に諮ったところ、満場一致をもってこれを承認可決した。
なお、被選任者は商号変更の効力の発生を条件として、その就任を承諾した。

取締役  ○○ ○○
取締役  △△ △△

商号変更時、退任する取締役全員が移行と同時に任期満了により重任する場合は、取締役の構成に変動がないことから、定款の定めに基づく取締役の互選によって代表取締役を定めることが可能です。

これに対し、株主総会において、取締役全員が再任されなかった場合は、移行前の現在の取締役が移行後の代表取締役を予選することはできないため、移行後の株式会社の定款の附則に移行後の代表取締役の氏名を記載することになります。

定款附則載例

(株式会社の設立後の最初の取締役等)
附則第○条 株式会社設立後の最初の取締役は、
○○ ○○、△△ △△とする。
設立後の最初の代表取締役は、
□□県□□市□□区1丁目1番1号 ●● ●●とする。

有限会社→株式会社への変更時の注意点

特例有限会社から、株式会社に移行すること自体は、商号の変更→登記(特例有限会社の解散登記+株式会社設立登記)だけで行うことができますが、移行後の株式会社をどうのような仕組みにするのか検討する必要があります。

たとえば、

  • 機関構成をどうするか
  • 取締役会、監査役設置の有無
  • 役員の任期、人数
  • 資本金の額を増加するのか

これら移行後の株式会社について、慎重に検討する必要があります。

なお、取締役会や監査役・代表取締役の設置を任意に選択できるのは、非公開会社(全ての株式について譲渡制限がなされている会社)に限られていますので、株式の譲渡制限を設けるか否かについても、同時に検討する必要があります。

なお、この商号変更による登記申請を行った後は、有限会社に戻ることができないのは、言うまでもありません。

有限会社から株式会社への変更手続きの流れ・フロー

STEP1 『株式会社』に変更する為の定款案の作成
STEP2 株主総会の招集
STEP3 株主総会の開催(『株式会社』に変更する為の定款変更の特別議決)
STEP4 商号変更後の定款の作成
STEP5 商号変更後の法人実印(代表社印)を作成
STEP6 本店所在地を管轄する法務局への登記申請

※商号変更の手続きを行う場合は有限会社を解散し、株式会社を設立する手続きを行うため、「特例有限会社の解散登記」と「株式会社の設立登記」の2つの申請を同時に行う必要があります。

有限会社→株式会社への変更手続きに必要となる書類

  • 商号変更による株式会社設立登記申請書
  • 別紙(登記すべき事項)
  • 株主総会議事録
  • 商号変更後の定款
  • 就任承諾書
  • 代表取締役の印鑑証明書
  • 追加する役員の印鑑証明書
  • 印鑑(改印)届書
  • その他、登記事項に変更が生じた場合、その他定款の内容に変更が生じた場合は当該変更に係る書面を添付
  • 商号変更による解散登記申請書

有限会社→株式会社への変更登記に必要な登録免許税

  • 特例有限会社の解散登記:30,000円
  • 株式会社の設立登記:資本金額の1000分の1.5(30,000円に満たない場合は30,000円)

合計 60,000円

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