
在職老齢年金とは? – 働きながら受け取る年金の仕組みと注意点
働きながら年金を受給する「在職老齢年金」は、60歳以降も就労を続ける人が増えるなか、重要な制度の一つです。
本記事では、制度の基本から支給停止の条件、年金額の見直し、繰下げ受給との関係まで、わかりやすく解説します。
在職老齢年金とは?
厚生年金の加入期間がある人が老齢厚生年金の受給権を得た後、厚生年金の適用事業所で働き続けている場合、その給与額に応じて年金が「全部または一部支給停止」される制度です。
支給停止の基準(令和6年度)
- 給与(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の合計が50万円を超える場合、その超えた分に応じて老齢厚生年金が調整されます。
- 支給停止の対象は老齢厚生年金のみで、「老齢基礎年金」は影響を受けません。
総報酬月額相当額の計算式
- 標準報酬月額 +(年間の標準賞与額 ÷ 12)
在職定時改定・退職改定とは
老齢厚生年金の受給開始後も厚生年金保険の被保険者として就労を続けると、その保険料納付実績が年金額に反映されます。
在職定時改定
- 毎年9月1日、前年9月から当年8月までの加入期間をもとに年金額が見直されます。
- 新しい年金額は10月分から反映されます。
退職改定
- 退職した場合、その1か月後を経過した時点で年金額が再計算・改定されます。
70歳に到達した場合
- 在職中であっても、70歳の誕生月の翌月分から年金額が自動で改定されます。
繰下げ受給と在職老齢年金の関係
老齢厚生年金は原則65歳から受け取れますが、66歳~75歳の範囲で受給を「繰り下げ」ることで増額させることも可能です(※一部、生年月日によっては上限70歳)。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 繰下げによる増額率は、「支給停止されていない部分の年金」にしか適用されません。
- 給与が高くて年金が全額支給停止されていた場合、増額対象がゼロとなり、繰下げによる増額の恩恵を受けられません。
- 年金の一部のみ支給されていた場合は、その部分にのみ繰下げ増額率が適用されます。
まとめ
在職老齢年金は、「働きながら年金を受け取る人」にとって、制度を正しく理解することが非常に重要です。
特に給与と年金の合計が多い場合は支給停止の対象となり、繰下げ受給を選んだ場合の増額にも影響が出ます。
ライフプランに応じて、退職時期、給与設定、繰下げの選択などを慎重に考慮することが求められます。不明な点は年金事務所や専門家に相談することをおすすめします。