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在籍出向で出向元が賃金を補填するときの労働保険・社会保険の手続きと注意点

2026 1/21
人事労務 社会保険・労働保険
2026年1月21日
在籍出向
目次

「労災・雇用・社会保険」で加入先がズレる理由と実務の注意点

在籍出向は、雇用関係を出向元に残しつつ、実際の就労は出向先で行う形態です。

出向先と出向元で賃金水準や休日などの条件に差がある場合、出向者の不利益を避ける目的で、出向元が「賃金補填」等の名目で別途賃金を支給し、補填する設計を採ることがあります。

もっとも、賃金が出向先・出向元の双方から支給されると、労災保険・雇用保険・社会保険の各制度で適用(手続きの考え方)の基準が異なるため、手続きが一気に複雑になりますので、本記事で詳しく解説をいたします。

1. まずは全体像を押さえよう:保険ごとに“適用の考え方”が違う

在籍出向者の労働保険・社会保険は、賃金の支払方により、出向先・出向元のどちらで適用されるかが制度ごとに異なります。

本記事では、出向先が主として支給し、出向元が賃金を補填支給する場合を想定して、解説をいたします。

このケースを整理すると、次のとおりです。

  • 労災保険:出向先(実際に働く事業所)
  • 雇用保険:主たる賃金を支給する会社(本記事では出向先)
  • 社会保険:出向元・出向先の両方で被保険者(そのうえで「二以上事業所勤務届」)

2. 労災保険:加入は出向先。賃金は“合算”で取り扱う

労災保険は、賃金の支給元にかかわらず、実際に業務に従事している出向先で加入し、保険料も出向先で納付します。

そして、賃金が出向先と出向元の二カ所から支給される場合、出向元で支給された賃金が「出向先で業務に従事したことに起因する賃金」であれば、出向先で支払われた賃金とみなして合算し、出向先の「労働保険 概算・確定保険料申告書」の算定基礎賃金に含めます(本記事では出向手当が該当)。

また、労災給付の場面でも、出向元・出向先の賃金を合算して取り扱い、請求時に記入する「平均賃金算定内訳」には、出向元賃金の情報確認のうえ、出向先で合算賃金を記載する運用が示されています。

実務のポイント

出向先が労災関係の窓口になりますので、出向元が支給する出向手当の額・支給月等を、出向先へ確実に共有できる設計にしておくと手戻りが減ります。

3. 雇用保険:加入は「主たる賃金」支給会社“だけ”

雇用保険は、複数社で要件を満たしていても、生計維持に必要な主たる賃金を支給する会社のみで加入します。保険料や給付の基礎となる賃金も、加入する会社が支給する賃金だけが対象です。

本記事の例のように賃金が出向先からあれば、出向元の雇用保険は資格喪失し、出向先で資格取得の手続きを行います。

出向者が“不利”になり得る点(見落とし注意)

主たる賃金が出向先で雇用保険に加入すると、雇用保険料も給付に関係する賃金も「出向先賃金のみ」が対象となるため、出向終了後一定期間内に離職する場合や雇用継続給付の局面では、一社のみから賃金支給される場合と比べて不利になることがあるとされています。

4. 社会保険:両社で加入し、「二以上事業所勤務届」で窓口を決める

社会保険は、会社と使用関係があり、賃金支払いがあり、加入のための要件を満たせば加入します。複数社で要件を満たす場合は、それぞれの会社で被保険者となります(ただし窓口会社を一つ選び、所定の届出を行う)。

在籍出向で出向元・出向先のいずれからも賃金が支払われる場合、両社で社会保険に加入することになり、出向先でも資格取得手続きが必要です。

そのうえで、出向者本人が窓口として選択した会社を主たる事業所として、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、選択した事業所を管轄する年金事務所へ提出します。健康保険組合加入の場合は、年金事務所のほか健康保険組合にも提出します。なお、提出者は出向者本人とされていますが、会社が本人に代わって提出しても差し支えないとされています。

出向元を主たる事業所にする場合でも、出向先の資格取得が先

出向元を主たる事業所として選択する場合でも、出向先で資格取得届を提出した後に二以上事業所勤務届を提出する流れになります。

その後:決定通知書で標準報酬・保険料が確定

手続き後、健康保険組合や年金事務所から「二以上事業所勤務被保険者決定及び標準報酬決定通知書」が届き、各社の標準報酬月額と保険料額が示されます。各社はそれぞれの給与支給時に本人負担分を控除し、会社は保険料を納付します。

5. 最後に:賃金設計が「手続き負担」と「本人不利益」を左右する

在籍出向では、企業間の取決めにより賃金の支払方を設計できますが、支払方によっては、出向者が不利になったり、手続きが煩雑になったりするため注意が必要です。

したがって、出向契約(賃金補填の設計)を決める段階で、少なくとも次の点は先に確認しておくのが安全です。

  • 雇用保険の「主たる賃金」をどちらに置くか(将来の給付への影響)
  • 出向先・出向元での労災保険での賃金の位置づけ(労災保険の算定基礎賃金に合算される運用)
  • 社会保険の二以上事業所勤務届の要否

まとめ

在籍出向は、賃金設計(補填方法)と手続き設計(窓口・届出順序)が噛み合っていないと、出向者への説明コストや、保険手続きの手戻りが大きくなりがちです。

貴社の出向スキーム(賃金の支払方、主たる賃金、二以上事業所勤務届の提出先、必要書類の整備)を前提に、実務に落ちる形で整理が必要となります。社内の運用フロー(担当者・期限・必要情報)まで含めて整えると、後のトラブル・紛争・事故などが減りますので、本記事を参考にしていただけますと幸いです。

人事労務 社会保険・労働保険
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