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高齢者雇用で増える社会保険の年齢別手続き~65歳・70歳・75歳の分岐点を整理する~

2026 2/05
社会保険・労働保険
2026年2月5日
高齢者雇用と各種保険
目次

加入資格と保険料の“年齢別”ポイント(60歳・65歳・70歳・75歳)

人手不足の影響もあり、定年後も勤務を継続する社員が増え、65歳以降で入社するケースも見られるようになりました。

高齢者雇用では、社会保険が「一度入ったら同じ」ではなく、年齢ごとに加入区分や保険料の徴収、必要な届出が変わる点に注意が必要です。

本コラムでは、会社員(被用者)を前提に、雇用保険・健康保険・介護保険・厚生年金保険について、実務で迷いやすいポイントを整理します(労災保険は年齢に関係なく加入します)。

まず押さえる「年齢の分岐点」

高齢者雇用の社会保険は、概ね次の年齢で取扱いが変わります。全体像を掴むと、後の必要となる手続(給与控除・届出)が整理しやすくなります。

  • 65歳:雇用保険の区分が「一般被保険者から高年齢被保険者」へ / 介護保険が「第2号被保険者→第1号被保険者」へ
  • 70歳:厚生年金保険の被保険者ではなくなる(ただし手続きは続く場面がある)
  • 75歳:健康保険を喪失し、後期高齢者医療制度へ(扶養家族も影響)

雇用保険:65歳で「高年齢被保険者」へ(原則、変更手続き不要)

雇用保険は、原則として 週20時間以上・31日以上の雇用見込み等の要件を満たすと加入対象になります。

65歳以上になると「一般被保険者」から「高年齢被保険者」に区分が変わります。ただし、65歳到達を理由とするハローワークへの変更手続きは不要です。

65歳以上の例外:マルチジョブホルダー制度

65歳以上で複数の事業所に勤務する方について、勤務先1か所の所定労働時間が週5~20時間未満でも、複数先の労働時間を合算して週20時間以上になれば高年齢被保険者になれる仕組みがあります。手続きは本人申請で、会社は必要事項の記載や証明等で協力します。

健康保険:75歳で資格喪失(扶養家族も同時に喪失)

健康保険は、75歳になると資格を喪失し、後期高齢者医療制度へ移行します。このとき、被保険者本人が75歳で喪失すると、被扶養者も同時に資格を失う点が重要です。

手続きは「保険者により異なる」

75歳喪失の手続きは保険者ごとに取扱いが異なります。たとえば、協会けんぽ(全国健康保険協会(協会けんぽ))の場合、75歳到達前に事業所へ喪失届が送付され、誕生日以降に届いた喪失届へ記入し、被扶養者分も含めて保険証を添えて提出する流れが示されています。

一方、健康保険組合等では、喪失届の提出を求めず、連絡票に基づき保険証の返却のみで足りる場合もあります。

保険料徴収の月に注意

康保険料は、原則として 「75歳の誕生日が属する月まで」 徴収します。介護保険料・厚生年金保険料とは締めの考え方が異なるため、給与控除の設定でズレが出ないよう注意が必要です。

介護保険:65歳で第2号被保険者→第1号被保険者(給与控除が切り替わる)

介護保険は40歳以上で被保険者になりますが、65歳未満は第2号被保険者、65歳以上は第1号被保険者という区分になります。

  • 第2号(65歳未満):健康保険とあわせて保険料を徴収(給与控除)
  • 第1号(65歳以上):原則、特別徴収(公的年金から天引き)

ただし、65歳以降も勤務していて公的年金がまだ支給されていない場合、市区町村から届く納付書で納めることがあり、納付漏れに注意が必要です。

また、65歳到達時に特段の手続きはありませんが、第2号被保険者として給与控除する介護保険料は 「65歳の誕生日の前日が属する月まで」 となります。特に誕生日が1日の方は、控除月の取扱いがずれやすく要注意です。

厚生年金:70歳で被保険者ではなくなる(ただし、その後も手続きは残る)

従業員が70歳に到達すると、厚生年金保険の「被保険者」ではなくなり、以後は保険料の徴収も行いません。

保険料の徴収は、介護保険と同様に 「70歳の誕生日の前日が属する月まで」です。例として、誕生日が7月1日の場合、6月30日に資格喪失となり、保険料はその前月(5月分)までの徴収となります。

このとき、70歳前後で標準報酬月額に変更がない場合は、原則として「70歳になったこと」自体を理由に、別途の資格喪失手続きは不要です。

一方で、70歳時点で標準報酬月額の変更等がある場合は、年金事務所へ 「70歳以上被用者該当届」 を提出します。

また、70歳で被保険者ではなくなった後も、在職老齢年金の仕組みが関係するため、「70歳以上被用者」 として、一定の厚生年金保険の手続きが続きます。

実務では、次のような届出を通常の被保険者と「同じ感覚で」行う場面が出てきます。

  • 退職や労働時間の短縮等により要件を満たさなくなった場合:「70歳以上被用者不該当届」
  • 定時決定・随時改定に関する届出:「70歳以上被用者算定基礎届」/「70歳以上被用者月額変更届」
  • 賞与を支給した場合:被保険者と同様に賞与に関する手続き

定年後再雇用で実務効果が大きい「同日得喪」

定年等で60歳以上の従業員をいったん退職扱いとし、翌日(=1日も空けず)に再雇用するケースでは、健康保険・厚生年金保険について「同日得喪」(同日に資格喪失と資格取得を行う)という取扱いを使えることがあります。ポイントは、再雇用により賃金が下がる場面です。

通常、賃金が下がっても社会保険料はすぐには下がらず、標準報酬月額の見直しが反映されるまでタイムラグが生じます。そこで同日得喪を行うと、再雇用後の賃金水準に応じた保険料を、原則として翌月から適用でき、過大な保険料負担が続く期間を短縮できます。

手続きとしては、年金事務所(健保組合加入の場合は健保組合も含む)に対し、「資格喪失届」と「資格取得届」をセットで提出します。この取扱いを行うと、原則として健康保険の記号・番号が変更になるため、被扶養者がいる場合は、被扶養者分も含めて保険証の返却が必要です。

また、定年後再雇用であることを確認できる資料を添付します(例:就業規則の定年・再雇用規定、再雇用後の雇用契約書等)。協会けんぽの場合は、事業主の証明で足りる取扱いもあります。
なお、この仕組みは「定年制がある会社だけ」のものではなく、60歳以降に退職→継続雇用という形を取る場合も、要件を満たせば対象になり得ます。

実務のコツ:誕生日を起点に「控除・届出」をカレンダー化する

高齢者雇用では、制度ごとに「区分変更」「保険料の徴収月」「届出の要否」がバラバラです。属人的に運用するとミスが起きやすいため、誕生日(到達日)を起点に、次の3点をセットで管理するのが安全です。

  1. 給与控除がどの月までか(健保:75歳月末/介護・厚年:前日属月まで)
  2. 保険者・年金事務所への届出が必要か(保険者により差、70歳時の該当届など)
  3. 同日得喪の適用可否(定年後再雇用・給与低下の有無)
社会保険・労働保険
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