介護保険法による通所介護(デイサービス)の新規開設に必要な初期投資・資金の額は、立ち上げるデイサービスの規模やコンセプトによって変わりますが、小規模な通所介護(デイサービス)を立ち上げる場合の費用の目安は以下の通りです。
なお、障害者総合支援法による生活介護(デイサービス)や短期入所(ショートステイ)においても参考になるかと思います。
通所介護開業までに出来るだけ自己資金を貯めておいて、以下のような費用を賄えることが理想です。
自己資金だけで開業に必要な資金が賄えない場合は、日本政策金融公庫の新創業融資等を活用して資金調達する必要があります。
物件の確保にかかる費用
小規模デイサービスの場合、地域差もありますが、賃料の月額の目安は20万~35万程度になります。
それに加えて、保証金6カ月~10カ月程度+仲介料が必要です。
地域により保証金等の支払に関する慣習は異なりますので、物件を探す際には不動産会社とよく相談しましょう。
家賃は固定費になるため、安いに越したことはありませんが、安ければ良いという問題ではありません。
通所介護の経営を成功させるためにも、また、通所介護開業の資金調達(融資の審査)上も重要になるのは、
「なぜその地域で、その物件を借りるのか?」
ということです。
日本政策金融公庫の融資の審査においても、単純に家賃の「安い・高い」だけが問題になるのではありません。
- 利用者の通いやすさ・安全の確保
- 視認性(目立つ場所かどうか、事業所の存在に気がついてもらいやすい場所か)
- 従業員の定着
なども考慮した上で、
「経営戦略として適切だからこそ、この場所・家賃で決めた」
という説明が金融機関側にできるような物件選定をしましょう。
内装工事費用
改装工事費用を抑える観点からは、通所介護のコンセプトに応じて、なるべく工事が不要な物件を選ぶことが何より重要です。
まず、一般的な注意点としては、バリアフリー・安全性の確保に適した物件を選ぶことが重要です。
言うまでもなく、デイサービスは高齢者・身体等に不自由を抱える方が通う場所です。
高齢者が利用するにあたっての安全性の配慮が必要です。
各種段差の解消や手すりの設置だけではなく、地震・火災発生等の緊急時に避難しやすい構造なのかも重要です。
安全性の配慮は、ケアマネージャーから利用者の紹介を受けるためにも重要なポイントになります。
バリアフリーや安全性の確保に適さない物件を借りてしまうと、バリアフリー等に配慮した工事を行う必要があるため、工事費は高くなります。
物件の構造によって、消防関係の設備の設置が必要になる場合もあり、その場合も費用が高くなります。
物件を借りる前には、予め消防署に賃貸物件の図面を消防署に持っていき、消防関係の規制・設備の必要性について確認することが重要です。
特に、近年はデイサービスに対する消防署の姿勢が厳しくなっておりますので、消防関係の事前確認の重要性が増しています。
通所介護の物件には、通所介護の指定申請の要件を含めて様々は規制があります。
管轄の行政としっかり協議ながら物件を選定することが大切になります。
よくある失敗例として、管轄行政との協議が不十分なまま、法令の要件を満たさない物件を借りてしまったために、無理やり要件を満たすために予想外の改装工事が必要になり、改装工事費用が増えてしまうケースは非常に多いです。
また、管轄行政との事前協議を疎かにして見切り発車で店舗物件を借りてしまうケース。後で法令の要件を満たしていないことが判明してしまい、希望の時期に通所介護事業者の指定が受けられなくなってしまいますので注意が必要です。
他の工事費用増加要因としては、通所介護のコンセプトに応じて工事が発生することが挙げられます。
例えば、入浴を行う場合は、浴室等工事のため工事費が高くなりますし、食事提供を行う場合は厨房設備等の工事のため工事費が高くなります。
人材採用に係る費用
デイサービスに限りませんが、介護事業は、「人」が全てです。
通所介護の指定の人員基準を満たす人材(資格者等)を含めた質の高い人材を、いかにコストをかけないで採用するのかが、創業時は重要になります。
その点、デイサービスの開業前までに培った人脈や知人の紹介があれば、採用コストはゼロです。
通所介護の起業で成功している当センターの顧問先の例を見ると、開業前までに使った人脈から創業時の主要人員を集めているケースが多いです。
ただし、どうしても、開業までの人脈で必要な人材が集まらない場合は、ハローワークを活用しましょう。
ハローワークの利用は無料ですし、ハローワークで人材を採用すると、結果的に、助成金が受給できる場合がありますのでおススメです。
ハローワークでの採用もうまくいかない場合は、人材紹介会社を活用しましょう。
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ただし、人材紹介会社を使うと手数料を取られます(採用した従業員の年間給料の30%等)
補足:一度採用をした人材に、いかにして定着してもらうのか。
人材採用のコストは創業時だけなく、開業後も無視できないコストになります。
「せっかく採用しても、すぐ辞める」という繰り返しですと、求人広告の費用ばかりが増え、人材が全く育たない状態になってしまいます。
このような採用→退職→求人広告→採用→退職という悪循環に陥っている介護事業所は多いです。
採用した後に定着してもらうための就業環境の整備も、長い目で見ると経営効率を上げるための重要な要素になります。
備品購入費用
前の入居者が使用していた備品で譲り受けられる物(棚・ロッカーなど)が活用できる場合は活用してコストを下げることもできます。
従業員用の机・椅子等、利用者の安全に影響が無いものは、リサイクル品等を活用することでコストを下げることもできます。
車両購入費用
乗車人数、車いすの乗降への対応などの機能により価格には幅があります。
ただし、利用者の安全確保の観点からは、中古車購入はお勧めできません。
リース契約は、契約内容によっては、かえってコストが高くつく場合が多いので注意して契約しましょう(リース会社のセールストークを鵜呑みにしないように)。
初期投資を抑える観点からは、送迎について外部委託の活用も検討しましょう。
専門家委託費
弊社のような資金調達支援を行っている専門家に依頼する費用です。
法人設立・資金調達(融資申請・補助金)等を含む各種の続きや契約書等の作成の依頼ができます。
一定のコストはかかりますが、不慣れな手続きは専門家に任せることで、「経営者としての本業」に専念することができるのは大きなメリットです。
なお、ご自身で融資に必要となる事業計画書の作成を行いたいという方は、こちらもお勧めです。
実際に融資が下りた介護事業所(デイサービス)の事業計画書も入っています。実際に日本政策金融公庫から融資がおりた事業計画書をお届けする書式集です。