日本政策金融公庫とは?銀行とは何が違う?取引きの始め方など認定支援機関がわかりやすく解説

当ページでは、これから事業を始めようと考えている新規開業者、あるいは、既に開業をしていて、日本政策金融公庫と取引を始めようと考えている経営者様向けに、「日本政策金融公庫とは一体どんな機関で、何をしてくれるのか?」を分かりやすく解説しています。

実際に融資の申請を行う場合の手続きの流れや注意点についても記載しておりますので、ぜひ、参考にしてください。

日本政策金融公庫とは?日本政策金融公庫の業務内容と国民に求められている役割

主な業務内容は小規模事業者及び中小企業への資金の貸付です。預金業務は行っていません。

一部、教育ローンなど一般家庭向けのサービスもありますが、基本的には、事業者向け貸付専門の金融機関になります。

新規創業を支援して雇用を確保

事業者向け融資の中でも、日本政策金融公庫が特に力を入れている制度があります。「新創業融資」です。

新規事業が増えていかなければ、長期的には新たな雇用は増えず、GDPの伸びも頭打ちとなります。

これ以上、日本経済の成長は望めず、さらに、今後は人口も減っていくわけですから、日本経済は衰退していく一方です。

政府は、なんとしてでも起業を促進していきたいと考えています。企業が増えていかなければ税収も減っていくわけですから。

とはいえ、新規事業を立ち上げるには、事業によって差はあれど、資金が必要です。

ビジネスアイデアがあり、雇用を生み出せそうな新規事業を思いついたとしても、元手がなければ起業はできません。

起業資金を全額自己負担で賄える人にとっては問題はありません。

が、起業資金を準備できない人の方が圧倒的に多い。長引く不況によって賃金も上がっていきませんので。。

そこで、日本政策金融公庫の登場ということになります。

前述の通り、日本政策金融公庫は国が100%出資を行っています。

融資金の原資は国民の税金です。

血税を使って貸付を行うわけですから、当然、融資の審査も難しくなりますが、逆に言えば、税金が原資ですから、国民誰にでも門戸は開かれているとも言えるのです。

極端に言えば、日本政策金融公庫が定めている融資の条件に合致さえすれば、融資は下ります。

既存企業への融資も積極的に行っている

日本政策金融公庫は、創業融資だけでなく、小規模事業者・中小企業を対象にした事業資金(運転資金や設備資金)の融資も積極的に行っています。

事業活動に必要となる運転資金、設備資金の貸付のほか、既存企業の新規事業進出・海外進出を支援する為の融資等も充実しています。

さらに、急激な資金繰りの悪化や経営危機に陥った企業に対する支援も行っています。

日本政策金融公庫は、日本の新規開業者及び中小企業のセーフティーネットを支えています。

近年で言えば、コロナ特別貸付などもその一つですね。

民間金融機関、特に銀行の貸し渋りに一石を投じる役目も持つ

銀行は新規開業者には、お金を貸しません。与信(信用)がないからです。

業績が悪化している中小企業にもそう簡単には融資を行いません。

銀行については、融資金の原資は税金ではありません。

預金者から預かった大事な預金の中から融資を行いますので、融資に慎重な態度を示すことは仕方のないこととも言えます。

本来、銀行が果たすべき役割を果たさないのであれば、政府が動くしかありません。

日本政策金融公庫は、新規開業者を増やす、あるいは、倒産を減らす為であるならば、多少リスクが高いと思われる貸付も積極的に行います。

日本政策金融公庫の特徴

無担保・無保証で利用できる(新規創業融資の場合)

日本政策金融公庫には、「新創業融資」という制度があります。

こちらの制度最大の特徴は、実績のない新規開業者向けの融資であるにも関わらず、担保・保証人が不要である点です。

民間銀行ではまずあり得ない条件です。

なお、新規開業者向けの融資には、制度融資(信用保証協会付き自治体融資)と言って、銀行・信用保証協会・自治体が一体となって貸付を行うものもありますが、これは信用保証協会に保証人になってもらことが融資の条件になっています。無担保ではあっても、保証人は必要なのです。

日本政策金融公庫の新規創業融資を利用する場合は、この信用保証協会の保証すら付ける必要がありません。

申込者の「信用力」のみを融資審査の対象としています。

ここ言う「信用」とは、申込み者本人の人格、知識、事業経験、自己資金の有無、金融事故歴の有無、事業計画の内容など、全てを含みます。

利子が安い

融資の利率は、新創業融資が年利で2.5%程度です。新創業融資以外ですと1%台のものまであります。

サラ金とは比べ物になりませんね。比較的融資が下りやすいと言われている銀行のビジネスローンですら6%~17%ですから、どれだけ利率が低いか、お分かりになると思います。

前述した「制度融資」も利率は同程度に低く抑えられていますが、別途、信用保証協会への保証料がかかります。これが決して安くはない金額になります。

日本政策金融公庫のほうが金利でも有利なことが見てとれます。

何度も言いますが、新規開業者向けの融資であるにも関わらず、担保・保証人が不要で、かつ金利は2%台です。活用しない手はありません。

固定金利

また、日本政策金融公庫の場合は、多くの融資制度で固定金利が採用されています。

変動金利であれば金利上昇局面で利息が増える可能性がありますが、固定金利だと、逆に返済金額も緩やかに減っていくので安心です。

その他にもメリットとして、借入期間が長く設定されている(毎月の返済額が安くなる)、融資実行までの期間が短い(3週間~1ヶ月。制度融資はもっとかかります)、なども挙げられます。

融資申請の流れ

①融資の下調べ・相談

全国に日本政策金融公庫の支店があり、そこに窓口がありますので、まずは相談へ行きましょう。

日本政策金融公庫が扱っている融資商品は数多くあります。

今の自分の状況にあった融資制度を窓口職員が案内してくれることもありますし、また、営業所内には融資制度のパンフレットなども多数用意されています。

一度、気軽に足を運んでみられると良いでしょう。

後述する融資担当者との面談なども営業所内で行われます。

事前に営業所の雰囲気なども知っておくことで、面談本番にも緊張することなく臨めるかと思います。

電話相談も可能となっていますので、自分にあった融資制度が無いか、気軽に聞いてみても良いかと思います。

日本政策金融公庫の事業資金専用ダイヤル

②融資の申込

借入申込書などを提出します。

新創業融資の場合は、事業計画書や設備資金の見積書などを添付書類とし、その他の借入(既開業者の運転資金やつなぎ資金の借入)の場合は、決算書なども合わせて用意します。

基本的には窓口に出向いて申込を行いますが、郵送で良い場合もあります。

宣伝にはなりますが、実際に融資が下りた事業計画書等の販売も行っておりますので、ご興味のある方は下記サイトをご覧ください。

③面談

融資の担当者と実際に面談を行います。

事業計画や決算書の内容に基いて質疑応答が行われます。

融資の申込時に提出する借入申込書や事業計画書などと同様、面談の内容が融資の可否を左右する重要なポイントになります。

ここでは、会社の経営状況などはもちろんのこと、起業家・経営者である「あなたの人となり」も判断されます。

明確な受け答えを心がけ、きちんとした服装で臨みましょう。

なお、窓口での面談だけでなく、実際に会社の店舗や工場などに融資担当者が視察に来るケースもあります。

既に取引がある場合、コロナ特別融資など緊急性が高い融資の場合は面談が省略され、電話面談のみとされることもあります。

④融資の決定

融資OKの場合、契約に必要な書類が送られてきます。

融資を断られた場合

融資がNGの場合は他の方法(制度融資や知人からの借入等)を探すことになりますが、一方的に断れられるケースもあれば、担保や保証人を追加すればOKと言ってくる場合もあります。

あるいは、減額を求めてくるケース(500万円の融資を申し込んでいたところ、300万円なら貸してもいい等)もありますので、その場合は事業計画の変更(設備の購入をリースに切り替える、減額された分は他から借りてくる)などで柔軟に対応できそうであれば、再交渉を行いましょう。

⑤金銭消費貸借契約を交わす

借入者本人の個人実印や、会社法人実印などの押印が必要になります。印鑑証明書、印紙なども必要になります。当然ですが、契約内容は精読しておきましょう。

⑥融資の実行・資金の振込

融資金が振り込まれます。銀行口座はこちら側から指定できます。通常は普段から決済などに使っている口座で良いでしょう。

なお、支店によってケースバイケースではありますが、融資の申込から実行まで最短でも1ヶ月程度はかかります。急な事業資金が必要な場合は、早めに早めに申込みを行いましょう。

一方的に融資を断られた場合でも、再度の申請は可能ですが、何度も行えるものではありません。

公庫での融資申請にあたっては、細心の注意を払いつつ、かつ、迅速に行うように心がけましょう。

自分一人で融資申請を行うのは不安だという方は、行政書士、税理士、中小企業診断士や認定経営革新等支援機関等の専門家の手を借りるのも一つの方法です。

もう一つの公的融資→制度融資(信用保証協会)とは?

前述の通り、制度融資とは、中小企業の資金繰りをサポートするために国・自治体が主となり、資金を融通する制度です。

国・自治体が資金を提供し、銀行がその受け皿となります。

銀行が窓口(地域によっては自治体がそのまま申込窓口になるケースもあります)となって融資を行い、その融資に信用保証協会が保証を付けます。

窓口となる銀行は、信用保証協会の保証がありますので、仮に金融事故を起こされても、信用保証協会が代位弁済するので、銀行の懐は痛みません。

銀行は基本はお金を貸したがりませんから、貸し渋り等といった社会問題も引き起こしてしまうのですが、それを回避し、地域経済を活性化させたるために、この制度はあります。

もし、日本政策金融公庫に融資を断られた場合でも、制度融資では融資が通ることもあります。

ですから、日本政策金融公庫がダメだったとしても、「創業には融資が絶対に必要」ということであれば、諦めずに制度融資にもチャレンジされると良いでしょう。

ここで大事なのが、なぜ日本政策金融公庫で融資を断られた理由をクリアにしておくということです。担当者に単刀直入に聞いても良いでしょうし、我々のような融資の専門家に相談してみるもの良いでしょう。

その上で、改めて制度融資にチャレンジするのが得策と言えます。