日本政策金融公庫《新創業融資》における通所介護、生活介護、短期入所開業の「創業動機」の書き方を認定支援機関がわかりやすく解説

当記事では、介護保険法による通所介護(デイサービス)の開業に際し、日本政策金融公庫の新創業融資における創業同期の書き方について解説いたします。

障害者総合支援法による生活介護(デイサービス)や短期入所(ショートステイ)においても同様に参考にして頂けるかと思いますので、参考にしてください。

それでは、どうぞご覧ください。

創業動機は施設のコンセプト・特色につながる

創業動機とは、あなたが通所介護・デイサービスを立ち上げたいと思った理由のことです。

最初は漠然とした気持ちかもしれませんが、創業動機を自分なりに整理して明確に意識することで、作りたい通所介護・デイサービスのイメージも明確になってくるのです。

創業動機は「どのような通所介護・デイサービスを作りたいのか?」というコンセプトにもつながるあなたの想い・理念とも言えます。

なぜ創業動機が重要なのか?

日本政策金融公庫にせよ、制度融資にせよ、融資申請の事業計画書(創業計画書)のフォーマットの最初の部分には、「創業の動機」を記入する項目があります。

金融機関は、なぜ創業動機を書かせようとするのでしょうか。

それは、融資申請者が「資金をきちんと返してくれる可能性の高い人」であるかどうかを判断するためです。

金融機関としては融資した資金を確実に返済してもらわなければなりませんので、通所介護・デイサービス経営の成功可能性が高い事業者に限って、融資を行う必要があります。

実際に通所介護・デイサービスを開業するまでは、その人が通所介護・デイサービス経営に成功するかどうかは分かりませんが、計画的に開業の準備をしてきた人ほど成功の可能性が高いはずだと金融機関は考えます。

また、金融機関は多くの企業を見ていますので、「経営」というものが決して甘いものではないと理解しています。

どんなに計画的に開業準備をしてきたとしても、事業者が苦しい状況に陥ることは当然あり得るということもまた理解しています。

つまり、苦しい状況に陥ったとしても、諦めずに通所介護・デイサービスを経営していくだけの熱意があると思われる事業者を選別し、融資を行うということです。

創業動機でアピールすべきポイント

金融機関が融資の可否を決める審査材料として「創業動機」の記入を要求している理由を考えれば、融資申請者が「創業動機」として書くべき内容・アピールするべきポイントは自ずと定まります。

創業動機に書くべき内容は、金融機関側が求める人物像(資金の返済可能性が高そうに見える人)を満たしていることを示す内容です。

別の言い方をすれば、融資の申請者が、単なる思い付きや軽い気持ちでの開業ではなく、介護事業者としての社会的使命感や強い想いがあって計画的に通所介護・デイサービスを開業しようとしているということが金融機関に伝わるように創業動機を書く必要があります。

そのためには、まずは3つのポイントに即して、自分の経験等を書きだして整理します。

①「きっかけ・背景」

これは、昔を振り返って考えたときに、「あの時、あの出来事がなければ、通所介護・デイサービスを開業したいと思っている今の自分は存在しなかったはずだ」というきっかけ・転機・背景を書きます。

介護業界や通所介護・デイサービスに興味を持ったきっかけを記述する部分と言ってもいいでしょう。

人によって様々なきっかけ・背景があるはずですので、そのきっかけを書きます。

②「これまでの経験」

①の「きっかけ・背景」(過去)から現在までどのように過ごしてきたのか、介護業界に興味を持ってから、どのようにあなたが過ごしてきたかです。

この内容は職務経歴や保有資格の有無を記入する項目と重複しますが差し支えありません。 

特に介護・医療関係の職に携わっていた方にとっては積極的なアピールポイントです。

例えば、

  • 看護師として病院に勤務していた
  • 通所介護・デイサービスの管理者を務めていた
  • 地域包括支援センターで相談員を務めていた

などの具体的な経験を勤務年数と共に書き出してみてください。

③通所介護・デイサービス開業に踏み切った理由

この部分は、どのような通所介護・デイサービスを目指して開業するのか、開業者としての志が含まれる部分です。

通所介護・デイサービスを開業されるみなさんは、これまでの経験の中で既存の通所介護・デイサービスの質・内容に不満を感じることがあったはずです。

「自分なら、もっと利用者に喜ばれる通所介護・デイサービス、利用者が必要としている通所介護・デイサービスを提供できるのに…」という気持ちです。

既存の通所介護・デイサービスでは地域社会の需要を十分に満たすことができないと気がついたからこそ、自分なりの理想の通所介護・デイサービス立ち上げを考え始めたはずです。その気持ちを書けばいいのです。

別な言い方をすれば、

「地域で必要とされているにもかかわらず、地域で足りない介護サービスを、自分が通所介護・デイサービスを開業して補う必要があると気が付いた」

という趣旨の内容が開業に踏み切った理由になります。

例えば、昨今ではリハビリ(機能訓練)専門通所介護・デイサービスが流行りで、数も増えています。

しかし、利用者の障害(症状)の種類によっては、適切な機能訓練を実施してくれる通所介護・デイサービスが地域に存在せずに困っている方もまだまだ多いです。

自分の経験からそのような社会的ニーズに気がついて、適切な機能訓練を提供できる通所介護・デイサービス立ち上げを決意したのであれば、金融機関にとっても納得しやすい開業理由と言えます。

以上の3つのポイントを意識して創業を動機を書いた実例は以下のようになります。

開業される皆さんの気持ちに即して、もっと詳しく書いて頂いても、差し支えはありません。

ここに挙げたものはあくまでもその考え方ですので、みなさんの熱意を更に詳しく、より具体的に記載して頂ければと思います。

最後に、実際に融資が通った創業同期の例を挙げておきますので、参考にしてください。

※掲載にあたり一部修正しております。

日本政策金融公庫の創業融資の審査に受かった創業動機の実例

①「きっかけ・背景」の部分

人と直接ふれあい、充実感を得られる職業に憧れて看護師を目指し、国家試験合格後、看護師として病院に勤務していました。

その後、勤務先の病院系列の通所介護事業所に異動となり、管理者を務めることになったのが自分の中での大きな転機です。

②「これまでの経験」の部分

介護業界でのやりがいと使命感から一生懸命仕事に取り組み、介護事業所の管理者として勤務する傍らで、定期的に自治体と介護事業者間の勉強会を開催するようになりました。

その経験の中で、現在の介護サービスの提供方法等の問題点を強く意識するようになり、自分で介護事業所を立ち上げれば、より利用者のニーズを捉えた介護サービスを提供できるのではないかと考えるようになりました。

③「開業に踏み切った理由」部分

数年前に最愛の両親の最期を看取り、サービス提供者の立場からではなく、「利用者の家族の立場」から高齢者とその家族を支える介護事業所の重要性を改めて痛感しました。

同時に、既存の介護事業所のあり方の問題点も明確になり、理想の介護事業所立ち上げへ意思が明確になりました。

このたび、一定額の自己資金が貯まったことや、勤務先の上司からの応援もあり職場を円満に退職できたことから、通所介護事業所の開業を決意しました。

まとめ

今回は、通所介護や生活介護、短期入所等の創業動機の書き方について見てきました。

創業動機は、金融機関が融資を行うかどうかの判断材料として大きなウェイトを占めます。

もちろん、自己資金の額や事業計画(数値計画)も大事ではありますが、その事業計画の土台・基礎となるのが創業動機です。

確実に融資を成功させるためにも、創業動機はおろそかにしてはなりません。

当記事を参考に、あなたオリジナルの説得力のある創業動機を作成して頂ければ幸いです。

なお、通所介護等の開業資金についての記事も掲載しておりますので、お時間のある方は下記ページもぜひご覧になってください。

通所介護等の開業に際し、事業計画書の作成を専門家等に頼まずにご自身で作成するという方は、事業計画書等の販売もしておりますので、ご入用の方はご活用頂ければと存じます。

実際に融資が下りた介護事業所(デイサービス)の事業計画書も入っています。実際に日本政策金融公庫から融資がおりた事業計画書をお届けする書式集です。