合同会社の社員退社についてわかりやすく解説。任意退社と法定退社

合同会社は、少人数の社員で構成され社員同士が個人的な信頼関係で結ばれていることを前提としている組織です。

ですから、合同会社設立後、状況が大きく変化し社員間の信頼関係が崩れた場合等においては、社員は退社することにより、出資した金銭の払い戻しを受けて投下資本の回収を図ることになります。

退社の方法は大きく分けて「任意退社」と「法定退社」の2つがあります。

任意退社

(1).合同会社の存続期間を定款で定めなかった場合や、特定の社員が生きている間合同会社が存続することを定款で定めた場合には、退社を希望する社員が6箇月前までに退社の予告を通知することで、事業年度の終了時に退社することができます。

もっとも、(1)の任意退社については定款で別段の定めをすることができます。

例えば、定款で退社の事前予告時期を短縮したり、入社後一定期間は任意退社することができないと定めることも可能と解されています。

また、

(2).定款の定めにかかわらず、各社員は「やむを得ない事由」があるときはいつでも退社することができます。

この「やむを得ない事由」とは、社員が単に当初の意思を変更したというだけでは足りず、定款規定を定めた時や入社・設立時に前提としていた状況が著しく変更され、もはや当初の合意どおりに社員を続けることができなくなった場合等をいうと解されています。

「やむを得ない事由」により退社する場合には、事前に予告することを要せず、また、事業年度の終わりを待たずに直ちに退社の効力が生じます。

法定退社

上記の任意退社の他に、法律の定める一定の事由(下記1~8)が生じた場合に社員は退社することになります。

  1. 定款で定めた事由が発生すること
  2. 社員の退社について総社員の同意があること
  3. 社員が死亡すること
  4. 合同会社(LLC)の社員である法人が合併により消滅すること
  5. 社員に破産手続き開始の決定がなされたこと
  6. 合同会社(LLC)の社員である法人が上記④⑤以外の事由によって解散したこと
  7. 社員が後見開始の審判を受けたこと
  8. 社員が除名されたこと

なお、社員が5、6、7に掲げる事由の全部または一部によっては退社しない旨を定款で定めることもできます。

相続および合併の場合の特則

合同会社においては社員(出資者)の死亡・合併による消滅は法定退社事由(上記3、4)です。

ですから、原則として社員が死亡しても当該社員の持分が相続人に承継される訳ではなく、退社を原因とした持分の払戻請求権を承継するにすぎません。

【比較】株式会社の場合、株主が死亡すれば株式は相続人に承継されます。

そうすると、仮に合同会社の経営者である社員が死亡してしまった場合、後継者への事業の承継がスムーズに行えず不都合が生じる可能性もあります。

そこで、このような不都合を回避したい場合、以下のような規定を定款に定めるのが一般的です。

第 ○○ 条(相続および合併の場合の特則)
社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合においては、当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する。

このように定款に定めれば、合同会社において社員が死亡・合併した場合でもスムーズに事業の承継を行うことができます。

合同会社の社員の退社方法は、自己の持分を他人に譲渡して退社する方法が実務上一般的です。

  • 自己の持分を新しく加入する社員に譲渡して、自分が退社する。
  • 自己の持分を既存の他の社員に譲渡して、自分が退社する。

このいずれかになります。

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