株式会社の解散・清算手続きの流れ、注意点、必要書類などをわかりやすく解説

株式会社の解散事由

株式会社は、次に掲げる事由によって解散します。

  1. 株主総会の特別決議
  2. 定款で定めた存続期間の満了
  3. 定款で定めた解散の事由の発生
  4. 合併により当該株式会社が消滅する場合
  5. 破産手続開始の決定
  6. 解散を命ずる裁判

会社に存続理由がなくなったなど、事業を停止する場合は、上記①の「株主総会の特別決議」により自主的に会社を解散させることができます。

自主的な廃業、解散をされるケース

  • 別会社を立ち上げることになり、今の会社は不要になった。
  • 休眠しているが、毎年の決算申告や法人住民税の負担が大きいから、この際、会社を閉じたい。
  • 株式会社としてではなく、個人事業として事業を行うことになった。
  • 高齢になり、跡継ぎもいないので、株式会社を解散して、綺麗に引退したい。
  • 株式会社を設立したが、体調が悪くなり、長期入院が必要になった。復帰の目処も立たないので、いっそのこと解散しておきたい。
  • 事業で利益を出すことが困難になってしまった。借金を抱えて破産する前に、自主的に会社を閉じたい。

上記の理由から、株主総会の決議によって解散される会社さんは非常に多いです。

事業を行っていないのに、株式会社を存続させておくことのデメリットとは?

デメリット 毎年、一定のお金がかかる

株式会社には法人住民税(地方税)がかかります。最低7万円です。

税務署、都道府県税事務所、市町村税事務所等に休眠の届出をすることにより、免税となる場合もあるようですが、自治体によってケースバイケースです。

会社を解散・清算させずに休眠という形をとる場合は、各自治体にて法人住民税が発生するか否かの確認を取っておきましょう。

注意しないといけないのは、「休眠の届出けだけでは法人は法的には消滅しない」ということです。

法務局への解散登記&債権者保護公告&清算結了登記を行うことによって、会社は法的に消滅することになります。

デメリット 毎年、決算申告を行う必要がある

たとえ事業活動を行っていなくても、税務署への毎年の決算申告義務があります。前述の休眠届けを行っていても、同様です。

デメリット 役員任期が切れたら管轄の法務局で申請を行う必要がある

事業活動を行っておらず、かつ、休眠届出を提出していたとしても、会社は、法的には生きている状態ですから、登記事項に変更が生じた場合、当然に、法務局での変更登記申請が必要になります。

役員任期が到来した場合、同じ人物が再任するにしても、重任の登記を行う必要があります。これを怠ると、裁判所より過料が課せられる場合があります。

これらのデメリットを鑑みると、今後一切、株式会社で営業活動を行っていく予定は無いということであれば、中途半端に休眠届けという形は取らず、多少の費用がかかったとしても、法的に会社を消滅(清算)させておいた方がよいかと思います。

毎年費用がかかりますし、活動するつもりもない会社を保有しているという精神的ストレスからも開放されます。

会社を法的に消滅させる手続き:法務局での解散・清算結了登記手続きについて

解散・清算結了登記は、会社を法的に消滅させることになりますから、法律上定められた手続きに従い、厳格に行わなければなりません。

株式会社を設立したときは、「設立の登記」が必要であったように、株式会社が解散をするときも「解散の登記」が必要になります。

注意

債務超過状態(税金の滞納があって払えない場合や、金融機関からの借り入れがあり、返済できない状態)である会社は、通常の解散手続きは行えず、裁判所への破産(倒産)手続きをとる必要があります。

なお、解散は会社の営業活動を停止させるだけですので、会社を法的に消滅させるためには、株主総会での解散の決議を行った後、「残っている財産の処分、債務の整理、法人税等の申告」などの事務手続き(清算事務)を行う必要があります。

この清算事務を行う人を「清算人」と呼び、通常は代表取締役が清算人に就任しますが、この清算人も登記事項になります。

清算人の就任登記は通常、会社の解散登記申請と同時に行います。

清算人が就任した日(最初の清算人就任日付は、必ず解散日付と一致します)から、本店の所在地では2週間以内、支店の所在地では3週間以内に申請しなくてはなりません。

なお、清算人の登記も会社の解散の登記も、申請人は代表取締役ではなく清算人が行ないます。

清算事務について

清算人は就任後、清算事務を行います。ここから、清算事務の流れについて解説していきます。

財産目録等の作成及び保存

清算人は、就任後、遅滞なく会社の財産の現況を調査し、清算開始時における財産目録及び貸借対照表を作成し、株主総会の承認を得なければなりません。

財産目録等は会社内部で保存しておきます。

債権者保護手続きを行う

  1. 会社の債権者に対し2ヶ月以上の期間内に債権を申し出るべき旨を官報に公告します。
  2. 会社が把握している債権者に対しては個別に通知します。

具体的には「債権申出催告書」を各債権者に送付します(郵送やメールでも問題ありません)。

解散の届出・申告を行う

解散後遅滞なく関係官庁へ解散の届出を行います。

主な届出書提出先は次のとおりです。

  • 税務署
  • 都道府県税事務所
  • 市区町村役場
  • 社会保険事務所(健康保険及び厚生年金保険の手続き)
  • ハローワーク(雇用保険の手続き)
  • 労働基準監督署(労働保険の手続き)

また、解散の翌日から2ヶ月以内に解散確定申告が必要になります。

債権の取立て及び債務の弁済を行う

  1. 未回収の債権(売掛金や貸付金等)があれば、すべて回収。
  2. 未払いの債務(買掛金や借入金、リース残金等)があれば、すべて弁済。

残余財産を確定する

全ての手続き終了後、残余財産があれば、株主に分配を行います。これで会社の財産がゼロになり清算事務が終了となります。

決算報告を作成する

清算事務終了後、遅滞なく決算報告を作成し、株主総会の承認を得なければなりません。

清算結了の登記申請を行う

清算に係る計算をして株主総会の承認を受けてから2週間以内に、管轄法務局で清算結了の登記を申請します。

清算結了の届出を行う

清算結了後遅滞なく関係官庁へ清算結了の届出を行います。

主な届出書提出先は次のとおりです。

  • 税務署
  • 都道府県税事務所
  • 市区町村役場

残余財産確定から1ヶ月以内に清算確定申告が必要です。

債権者に対する公告について

会社は、解散後、一定の期間内(2か月以上)に債権を申し出るべき旨、及び、その期間内に債権の申し出をしないときは清算から除斥される旨を官報に公告しなければなりません。

会社が知っている債権者に対しては公告とは別に個別に催告が必要です。

※官報とは、国が発行している機関紙であり、国立印刷局から発行されています。

※公告とは、会社から株主その他の利害関係者に対して公に広く知らせることをいいます。

清算結了の登記

清算人による全ての会社の清算手続終了後、清算人は清算に関する決算報告書を作成し、株主総会を開催してその承認を受けます。

そして、承認を得た日から、本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内に清算結了の登記を行う必要があります。

このように、会社の解散を決定した場合は、解散の登記と清算結了の登記の2つの登記が必要になります。

解散・清算手続きの流れ

STEP1 株主総会の招集
STEP2 株主総会の開催(株主総会による解散決議)
STEP3 清算人の選任
STEP4 本店所在地を管轄する法務局への会社解散登記および清算人の登記
STEP5 遅滞なく財産目録・貸借対照表の作成
STEP6 解散の公告
STEP7 債権者に対する債権申出催告
STEP8 株主総会(決算報告書の承認)
STEP9 本店所在地を管轄する法務局への清算結了登記申請

解散及び清算人選任登記に必要となる書類

  • 株式会社解散・清算人選任登記申請書
  • 別紙(登記すべき事項)
  • 定款
  • 株主総会の議事録
  • 清算人の就任承諾書
  • 印鑑届書

清算結了登記に必要となる書類

  • 清算結了登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 決算報告書

解散及び清算結了登記に必要な登録免許税等

  • 登録免許税 41,000円
  • 公告費用 約30,000~40,000円

解散・解散手続きQ&A

すぐに解散できますか?

すぐには解散できません。厳密に言うと、法務局への解散登記はすぐにできますが、実質的に会社を終了させるには「清算事務」という手続きを経てからになります。

手続きの中には、会社が解散したことを債権者へ知らせるための「債権者保護手続き」と言うものがあります。この債権者保護手続きは2ヶ月以上の期間を要します。

ですので弊社にご依頼を頂いた場合でも、ご依頼から清算結了(会社が法的に消滅する)までに、最低でも2ヶ月半~3ヶ月以上の期間を要します。少しでも早く解散・清算を行いたい場合は、早期のご依頼をお勧めしております。

今期の決算を控えてるのですが会社の解散は可能でしょうか?決算を終えてからでしか解散はできないのでしょうか?

株主総会で解散を決議した日=解散日となりますので決算前であっても後でも解散することは可能です。

ただ、法務局の解散登記と税務署への解散届出・申告は全く別のお手続きとなります。解散日が新しい事業年度末となり、期首から解散日までの解散事業年度の解散確定申告を行う必要がございます。

解散日を決算日に合わせると決算事務が軽減されますが税務署等への申告はお客様または貴社の顧問税理士が行っていただくことになりますので、一度、顧問税理士の方にご相談されるほうがよろしいかと存じます。

もし顧問税理士さんがいらっしゃらなければ、解散・清算手続きに精通した税理士をご紹介させていただくことが可能です。

ご紹介料やご相談は無料、税理士とのご面談も無料ですので、ご希望がございましたらお気軽にご相談くださいませ。

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