銀行融資申請時に最低限気をつけたい、チェックしておきたいポイントとは?

当記事では、銀行融資をスムーズに受けるために、何に注意をしければならないか、融資担当者はどこに着目して審査をしているのか、必要な準備にはどのようなものがあるのか等について解説致します。

信用保証協会の保証が付かないいわゆる「プロパー融資」を受けようとする場合、銀行は特に慎重に融資判断を行います。

日本政策金融公庫などの公的金融機関においても、考え方は同じです。新規で取引を始める場合は特にです。

押さえておきたいポイントは7つです。

それでは、見て参りましょう。

資金使途

1つ目のポイントは「資金使途」です。

資金使途には「運転資金」と「設備資金」があります。

運転資金とは

運転資金とは、事業を運営していく上で必要となる資金の総称です。

通常、仕入代金の支払いと売上の回収までにはタイムラグがあります。そのタイムラグを埋め合わせるための資金が運転資金の代表格です。

仕入代金、人件費、地代家賃、広告宣伝費等があります。

設備資金とは

設備資金は、商品、原材料以外の購入に必要な資金です。

機械や自動車、事務用品、事務所の購入費や賃貸にあたっての初期費用などが含まれます。

融資担当者は、まずはじめに「この会社はなんのために融資を受けようとしているのか?」を確認します。資金の使い途を確認するわけですね。

資金使途が分かれば、期限内に返済可能かどうかの大まかな予想を立てることができます。

「設備資金の融資を受けて機械を購入し、売上がアップ→業績がよくなれば、返済に問題はなさそうだ」

「運転資金が必要ということだが、売上が減少して必要な仕入れも減っているはずなのに、どうして運転資金が必要なんだろう」

このように、まずは資金使途を確認し、融資審査の判断材料とします。

資金使途違反には注意

融資がおりた後の話ではありますが、融資全般においての重要論点となりますので先に説明しておきます。

「資金使途違反」には注意してください。

例えば、設備資金として借入をしたにも関わらず、その資金を運転資金に充てた場合や、他行の借入の返済に充いた場合などは、明確な使途違反となります。

銀行にとっては確実に返済してもらえるかどうかのシナリオが大きく覆りますから、大問題です。

資金使途違反が発覚すると、会社と銀行との信頼関係が失われ、追加の融資を受けられなくなったり、最悪の場合は期限の利益を喪失し、一括全額返済を求められたりすることもあります。

お札には、「このお金は銀行から借りたもの」と目印がついているわけではないため、悪気なく設備資金で借りたお金を運転資金に回したり、運転資金で借りたお金を設備投資に使ってしまったりしてしまう人がどうしても出てきてしまうのです。

使途違反は、設備投資したときの領収書や現物の確認、決算書の分析などで、すぐにバレます。

どうしても借り入れたときとは違う使途でお金を使いたいケースが発生した場合は、必ず事前に銀行担当者に相談するようにしましょう。

借入金額

2つ目のポイントは「借入金額」です。

会社の規模や事業内容から考えて過大な借入をしてしまった場合、支払利息で利益が圧迫されます。また、元本の返済自体が資金繰りを悪化させる原因にもなります。

会社の収益性を度外視した過大な借入は、会社の成長そのものを阻害します。

想定以上の成果を上げられなければ、最悪の場合は借入が原因で資金ショートを起こし倒産、という憂き目にも遭いかねません。

融資担当者は、会社が希望している借入金額が適正なものかどうかを判断します。

では、どれくらいの借入金額にすればいいのでしょうか。

設備資金の場合は、購入しようとしている機械などの設備がいくらかで決まります。

設備の見積もりを取り、その金額を基準にして借入金額を決めましょう。なお、銀行からも、事前に購入予定設備の見積書などの提示が求められます。

運転資金の場合は、一概にいくらと言うことはできません。

仕入代金の支払いと売上の回収が、現金なのか掛けなのか、支払・回収の期間などの条件で変わってくるためです。

そこで活用できるのが、運転資金を簡易に求めることができる以下の公式です。

運転資金=売上債権+棚卸資産-買掛債務

となります。

運転資金は、売上の回収に時間がかかるならば大きくなり(売掛金が多くなる)、仕入代金の支払いがゆっくりでいいのならば小さくなります(買掛金が多くなる)。

つまり、小売業や飲食店業など、売上代金を現金ですぐに受け取る場合には、運転資金は少なく済みます。

ただ、注意しなければならないのは、決算書の貸借対照表から求められる運転資金は、あくまで「決算日に必要な運転資金」だということです。

決算の時期が閑散期で売掛金も棚卸資産も少なくなっているなどの場合には、貸借対照表から求められる運転資金が繁忙期よりも少なくなってしまうのです。

よって、繁閑差が大きい会社の場合は、毎月の試算表で運転資金をはじき出してから、借入金額を決定することをおすすめします。

返済原資

当然ですが、借りたお金は返済しなければなりません。融資担当者は審査の際、返済原資を必ずチェックします。

これは前述の資金使途と借入金額との関連が強いと言えます。

会社の立場から見れば、設備資金を借りて設備投資をすることで利益を増やします。

また、運転資金として融資を受けたときは、仕入代金を支払って、売上を回収することで利益を出し、それを借入金返済の原資にしようと考えます。

銀行は融資の返済を確実にしてもらいたいと考えているため、将来の成長性よりも過去の実績を重要視する傾向にあります。

融資を受けることでこれだけ利益を上げられるという見込みよりも、現状で利益が出せているかどうか、返済原資を十分に確保できそうな財務状態にあるかを重視します。

将来の収益性に疑義がある場合は、事業計画書や再建計画書の提出を求められます。

担保・保証人の有無

担保・保証人の有無も、当然ながら融資審査に影響を与えます。

担保が無い、保証人も居ないという場合でも、それだけで融資が受けられないということではありませんので、安心してください。

財務状態がよく、事業計画の実現可能性が高いと判断された場合は、担保がなく第三者保証人がいなくても融資は下ります(通常、会社代表者を連帯保証人とされる)。

担保の多くは土地・建物などの不動産です。担保はその価値(物件価値)が高ければ高いほど、融資審査には有利に働きます。

ただし、注意も必要です。例えば、自社工場の土地を担保に融資を受けたとしましょう。

その後経営不振に陥り返済ができなくなった場合。その土地は銀行に競売に掛けられ、売却を余儀なくされます。その場合、工場の立ち退き要求もしてくるかもしれません。

自社の事業と直結している不動産は極力担保には出さずに、その他の方法で融資が可能かどうかを最後まで模索してください。

返済期間と金利

まず、既に他の金融機関から借入をしている場合、その返済期間や金利をチェックされます。

既存債務の返済期間は「債務償還年数」というものでチェックされます。

債務償還年数

債務償還年数とは、「現在の借入金を、会社が出す利益によって何年で返済できるか」を求めたものです。

一般的には次のような計算式で求められます。

債務償還年数=(有利子負債合計-運転資金)÷キャッシュフロー

語句説明

有利子負債合計:短期・長期借入金や社債など
運転資金:上記の式と同じ
キャッシュフロー:利益+減価償却費(利益は、営業利益・経常利益・税引後純利益のいずれかを使用。ただし、営業利益・経常利益を使う時は、税金相当分を控除する)

この債務償還年数は、一般的に、10年以内であればよい状態であるとされています。

しかしながら、現状で10年以内なら即融資が受けられるというものでもありません。

融資を実行した結果、債務償還年数が10年を大きく超えてしまうようであれば、融資実行によって「よい状態ではなく」なってしまいますので。

結果、融資を断られたり、融資の減額を求められたりすることになります。

金利については、既存債務の金利が何%であるかを確認します。

損益計算書の支払利息と貸借対照表の有利子負債を確認すれば、簡易的な借入金利を調べることができます。

その金利を元に、他の金融機関がどれくらいの金利で貸し出しているのかを予想し、自行貸出分の金利も検討することになります。

経営者の人間性

銀行の担当者は、常に、経営者としての資質を見ています。銀行の担当者も人間です。誠実で真面目な経営者とお付き合いをしたいと考えるのは当然です。

担当者に対して居丈高な態度をとったり、上から目線でしか話せないような経営者さんもまれにいらっしゃいますが、いくら業績が良い会社でも、ここの会社の経営者は不誠実だと判断された場合(態度が横柄、私生活が派手等)は、融資では大きなマイナスポイントになります。

融資審査を通すためにも最低限揃えておくべき書類

以上が融資審査を受けるうえでのポイントとなります。

その上で、返済可能な会社だということを証明するために、以下の書類をきっちりと提出できる準備をしておくことが重要になります。

最低限、準備しておくべき書類は、次のようなものです。

  • 決算書
  • 月次の試算表
  • 資金繰り表
  • 事業計画書(社歴が短い、新規事業に進出するなどの場合。業績が良い場合は不要な場合あり)
  • 経営改善計画書(経営状況が悪く、再建のために融資を希望する場合)
  • 購入予定資産の見積書(設備資金の融資を希望する場合)etc

これらの書類は、堅実な経営をしていくために必要な書類(データ)でもあります。

銀行から提示を求められたときにすばやく提示することができなければ、「この会社は経理書類の管理すらできていない」とマイナス評価されかねません。

銀行が「きっちりと返済してもらえるか」という視点で審査することは、ひいては「会社が最低限の利益をあげ続けることができるか」という経営者の視点に通じるものがあります。

堅実な経営をし、考え抜かれた事業計画を示すことができれば、必然的に銀行への説明にも説得力が増します。融資審査も決してハードなものではなくなるでしょう。