当記事では、福祉(介護)タクシーの経営許可を取得するための要件の1つである、社会保険・労働保険の加入について解説いたします。
近畿運輸局や関東運輸局の審査基準では、社会保険・労働保険について、次のように規定されています。
健康保険法、厚生年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法(以下「社会保険等」という。)に基づく社会保険等加入義務者が社会保険等に加入すること。
審査基準
社会保険・労働保険とは?
そもそも社会保険・労働保険とはどのような保険を言うのでしょうか。
すでにご存知の方も多いとは思いますが、社会保険は健康保険と厚生年金保険を言います。労働保険は、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険を言います。
これらを総称して社会保険等と言ったりしますが、ここでは、社会保険は健康保険と厚生年金保険、労働保険は労災保険と雇用保険として考えていただければOKです。
社会保険・労働保険は、法律で加入義務が課せられているにも関わらず、未加入となってしまっているケースが多々あります。
ただし、許認可業種である福祉(介護)タクシーの経営許可おいては、社会保険・労働保険の加入は厳格に求められています。許可要件の一つになっていますからね。
実務上は、許可申請時点では宣誓書などで社会保険・労働保険に加入する旨を宣誓し、許可取得後、運送開始届を行う際に、加入の確認書(いわゆる「保険関係成立届」や「新規適用届」など)を提出することとされています。※具体的にどのような書類が必要かは管轄の運輸局によって異なりますので、事前確認必須です。例えば、近畿運輸局では法人の場合のみ保険関係成立届や新規適用届の控えの提出が求められています。
それでは、福祉(介護)タクシーと「社会保険」「労働保険」の加入について、それぞれ詳しくみていきましょう。
社会保険の加入について
社会保険の加入については、開業形態(一人で開業するのか、複数名で開業するのか、個人で開業するのか、法人で開業するのか)によって加入の要否が異なります。
※関東運輸局管轄では、運行管理者等と運転者の兼任が可能という運用がなされています。つまり、福祉(介護)タクシーを一人で開業することも可能となっています。
個人事業主で一人で開業する場合(社会保険)
この場合、個人事業主での開業ですから、社会保険への加入義務はありません。
もとより個人事業主はそもそも社会保険には加入できません。
ですから、福祉(介護)タクシーの許可においては、社会保険への加入義務は無い=確認書類等も不要ということになります。
個人事業主の場合は「国民健康保険」と「国民年金」に強制加入となります。
個人事業主で人を雇って開業する場合(社会保険)
前述の通り、個人事業主本人は社会保険には加入できませんから、社会保険への加入義務はないということになりますが、自分以外に人を雇う場合はどうなるのでしょうか。
個人事業主の場合、一定の業種の事業所で5人以上の労働者を雇う場合は社会保険に強制加入となります。
タクシー事業者である福祉(介護)タクシーもこの一定の業種に該当しますので、営業所において5人以上の労働者を雇う場合は、社会保険には加入しなければなりません。
福祉(介護)タクシーで5人以上で開業というケースは多くはないと思いますが、もし個人事業主という事業形態で5人以上で開業する場合には社会保険への加入義務が必須になります(強制適用事業所といいます)。
許可取得後に5人以上になる場合も同様に加入義務が発生しますので、注意が必要です。
なお、この場合でも個人事業主本人は、社会保険には加入できません。事業者自体が社会保険の強制適用事業所になるということですね。
法人で一人で開業する場合(社会保険)
株式会社や合同会社などの法人を設立して福祉(介護)タクシー事業の経営許可を受ける場合や、すでに法人を設立していて新たに許可を取得する場合について、見ていきましょう。
いわゆる一人社長・一人会社の場合ですが、法人は強制適用事業所とされていますので、社会保険には加入しなければなりません。
法人設立後に加入手続きを行いましょう。すでに法人を設立していて加入がまだという方も速やかに加入手続きを行います。
法人で人を雇って開業する場合(社会保険)
法人で許可を取得し、労働者を雇った場合・雇っている場合についてですが、常用労働者(いわゆる常勤や正社員)については、強制加入です。
パートやアルバイトなどのいわゆるパートタイム労働者に関しては、次の要件に該当する場合は社会保険への加入が義務付けられます。
- 1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である労働者
パートさんやアルバイトなど名称に関係なく、上記に該当する場合は社会保険に加入させなければなりません。
法人で福祉(介護)タクシー事業を行う場合は、社会保険加入は必須で、人を雇う場合は、「加入しなければならない人」と、「一定の要件を満たすことで加入しなければならなくなる人」の2種類があると覚えておくと良いでしょう。
※大企業などは上記とは別の加入要件が設けられていますが、福祉(介護)タクシー事業の開業では考える必要はないと思いますので、ここでの詳細の解説は割愛します。
労働保険の加入について
次は、労働保険です。労働保険には、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険があり、加入要件が異なっています。また、開業形態によっても異なります。
個人事業主で一人で開業する場合(労働保険)
個人事業主で一人で開業する場合は、労災保険・雇用保険いずれにも加入はできません。つまり許可の要件ではなくなるということですね。当然確認書の提出なども不要になります。
※なお、個人事業主で一人で開業する場合でも、労災保険に特別加入することはできます。特別加入は義務ではありません。労災保険の特別加入は、個人事業主は、本来は労災保険には入れないが、特別に入れてあげるという制度です。労災保険に入りたいという場合は、特別加入の手続きを取りましょう。
個人事業主で人を雇って開業する場合(労働保険)
労災保険は労働者を一人でも雇い入れた場合は加入しなければなりません。常勤、常用労働者、正社員、パート、アルバイトなど名称の如何に関わらずです。
雇用保険は、常用労働者(いわゆる常勤や正社員)については、加入必須です。
パートタイム労働者については、次の要件のすべてに該当した場合には、加入しなけれなりません。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上雇用される見込みがあること
法人で一人で開業する場合(労働保険)
社長個人は労災保険、雇用保険に加入することはできませんので、確認書等の提出は不要です。
※労災保険については、中小企業主等の特別加入を行うことはできます。
法人で人を雇って開業する場合(労働保険)
労災保険は労働者を一人でも雇い入れた場合は加入しなければなりません。常勤、常用労働者、正社員、パート、アルバイトなど名称の如何に関わらずです。
雇用保険は、常用労働者(いわゆる常勤や正社員)については、加入必須です。パートタイム労働者については、次の要件のすべてに該当した場合には、加入しなけれなりません。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上雇用される見込みがあること
前述の「個人事業主で人を雇って開業する場合(労働保険)」との違いはありません。
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